ブックタイトル森林のたより 746号 2015年11月

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概要

森林のたより 746号 2015年11月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹根粒菌123▲根にある丸い瘤が根粒「根粒菌」ってご存知ですか。山の歳時記9月号では樹木と共生する菌根菌、10月号ではその菌根菌の代表であるホンシメジを紹介しましたが、今月は樹木の成長を助ける根粒菌(こんりゅうきん)について紹介します。根粒菌はレンゲやダイズ(大豆)など、マメ科植物などの根に瘤(こぶ)のような組織をつくる菌類です。畑でダイズの苗を引き抜くと、その根には所々に数ミリメートルの膨らんだ瘤組織がついています。この瘤が根粒で、瘤の中にはバクテリアの一種である菌(土壌微生物)が生息しており、空気中の窒素をアンモニアに変換し(空中窒素固定と呼ばれます)、ダイズの成長に欠かせない窒素成分を供給しています。この窒素固定は根粒菌やクロストリジウム、アゾトバクター、ラン藻という微生物にしかできない技です。根粒菌は高等植物と共生する窒素固定菌の代表とされ、マメ科植物の根に共生する根粒菌が有名ですが、ハンノキやヤマモモ、コウヤマキなどとも共生しています。根粒菌は菌単独では窒素固定できず、植物の根に形成する根粒内でのみ窒素固定ができます。クロストリジウムとアゾトバクターも土壌中の細菌ですが、植物と共生することはありません。そしてラン藻ですが、これはインドの水田で無肥料にもかかわらず、ラン藻が生育すると米の収穫が多くなることが知られており、ネンジュモなどのラン藻が空中窒素固定することが分かっています。さて、話を根粒菌に戻すと、根粒の中にはバクテリアがたくさん生息し、宿主である植物から栄養をもらって生き、植物は根に根粒ができるおかげで生育するのに必要な窒素成分をもらう共生関係ができ上がっているのです。植物が光合成をして細胞をつくるにはタンパク質などが必要で、炭素(C)や酸素(O)、水素(H)と、土の中から窒素(N)を取り込まなければなりません。一般的には土の中には、アンモニア態の窒素化合物などが含まれるため、これを根が吸収すればよいのですが、土の中の窒素化合物は雨などで流れ不足しやすい成分です。そのため農業では、ことあるごとに窒素肥料が施されます。しかし根粒菌は空気中に多く存在する窒素のガス(N2)を、水素に結びつけてアンモニア(NH3)にすることができ、これを植物が利用するのです。昔から水田や畑でレンゲやダイズを育てたり、栄養分の乏しいヤセ山や砂礫地、岩石地などにハギやニセアカシア、ハンノキ、ヤシャブシを植えたりするのは理にかなった方法なのです。また、岩尾根などの養分の少ない立地でコウヤマキが見られるのも、根粒菌と共生しているお陰なのです。MORINOTAYORI 6