ブックタイトル森林のたより 748号 2016年01月

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概要

森林のたより 748号 2016年01月

活かす知恵とを森林人37御印の植物について●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー教授●川尻秀樹平成27年10月、揖斐川町谷汲での全国育樹祭にお越しになられた皇太子徳仁親王殿下が、翌日岐阜県立森林文化アカデミーを行啓されました。平成13年に開学した森林文化アカデミーとしては、開学以来の歴史的な出来事であり、お迎えする私たちも緊張しながら教育全般をご説明させて頂き、かつ在校生とのご歓談もしていただけました。この行啓の中、殿下の御下問から、その知識の深さに感動致しましたので、その一部を紹介しながら、御印の植物についてふれさせていただきます。私がご説明した林業教育の中で、殿下は「最近はチェンソーの振動、白蝋病は問題になっていませんか」とお尋ねになられ、また、広葉樹林の写真パネルに写る樹幹をご覧になって、それが梓(あずさ)であることに気づかれ、殿下自ら「あっ、これは」と指摘されました。「梓」は皇太子殿下の御印の植物です。御印とは皇族の方々が家紋のように、身の回りの品などに用いる徽章(御印章)で、天皇陛下は榮(えい=桐)、皇后陛下は白樺(シラカバ)、皇太子徳仁親王妃雅子さまはハマナス、愛子内親王さまは五葉躑躅(ゴヨウツツジ)となっています。さて、殿下の御印である梓は、植物図鑑にミズメ(Betula grossa)と記されています。ミズメは樹皮や木材がサクラによく似ており、材質的にも優れているため重宝され、ミズメザクラ(水目桜)の名称で広く流通しています。古くは梓弓(あずさゆみ)をつくる材として、神事や出産などの際、魔除けに鳴らす弓(鳴弦)として使用されました。みなさんも昔、学校で伊勢物語や万葉集を習った時に「梓弓」があったこと思い出しませんか。ミズメは樹皮を剥いだり、枝を折ったりするとサルチル酸メチル(鎮痛剤のサルメチール)臭がすることでも有名で、昔の杣人(そまびと)が疲労回復に利用したことから、マッサージ用のオイルまで販売されています。岐阜県内では、北部の山間地域の広葉樹林に多く見られます。次に、妃殿下の御印であるハマナス(Rosa rugosa)は、バラ科バラ属の落葉低木で、夏に赤い花(まれに白花)を咲かせます。ハマナスの花言葉は、「見映えの良さ」、「悲しくそして美しい」などがあり、人の心をとらえ、癒してくれる花でもあるのです。ハマナスと言えば、ある程度の年代層の方々は「知床旅情」の中で、「知床の岬にハマナスの咲く頃」と歌われたことを思い出されるように、ハマナスの浜は海岸の砂地を意味し、浜に生えて、果実が梨に似た形をしていることから「浜梨(ハマナシ)」と呼ばれていたものがハマナスという名になったのです。根は染料などに、花はお茶などに、果実はローズヒップとして食用にもなり、岐阜県内では花フェスタ記念公園や個人の庭などで見ることができます。また愛子さまの御印である五葉躑躅は、植物図鑑にシロヤシオ(Rhododendron quinquefolium)と記されています。シロヤシオはツツジの仲間で、5~6月に白色の美しい花を咲かせ、枝先には5枚の葉が輪生状につくことから、ゴヨウツツジとも呼ばれます。岐阜県内では中津川市と恵那市の市境にある高原、根の上高原にはこのシロヤシオが約100本自生し、恵那市の天然記念物に指定されていますので、一見の価値があります。さて、今年、2016年には「植物図鑑」という映画も公開されますが、皇族の方々の御印の植物を知ったことを契機に、植物図鑑片手に野に、山に出かけることも、森林と人とを活かすことにつながるとは思いませんか。▲ミズメの葉と果実MORINOTAYORI 10