ブックタイトル森林のたより 752号 2016年05月

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概要

森林のたより 752号 2016年05月

●詳しい内容を知りたい方はTEL050ー3160ー6572中部森林管理局森林整備部までぎふの国有林、今地球温暖化対策のための低コスト造林の取組み林野庁中部森林管理局森林整備部森林整備課長永井隆雄7はじめに現在の日本は人口減少に加え、少子高齢化とともに、山村地域の過疎化や不在村森林所有者が増加し土地所有の不明化が進んでいます一。方、戦後造成した人工林が、森林資源として本格的に利用可能な段階を迎えています。林野庁では、この豊富な森林資源を循環利用し、森林林業・木材産業の成長産業化を実現するため、国産材自給率を現在の三一%から、二〇二〇年までに五〇%とすることを目標に、様々な施策を展開しています。地球温暖化対策を進めるために樹木も含め植物は、光合成により二酸化炭素を吸収しています。成長期の若い森林は、二酸化炭素をどんどん吸収して大きくなりますが、成熟した森林になると、吸収能力は低下していきます。森林による二酸化炭素の吸収量を確保するためには、若齢の森林の間伐に加えて、成熟した森林の主伐後の再造林による若返りが必要不可欠となります。造林コストと山林所得の現状平成二七年一二月に開催された林政審議会における林野庁の資料によると、主伐までのコストを、平成二六年度の全国の標準単価の平均を使用して算出した場合、地拵、植栽(スギ一ha当たり三千本)、下刈(年一回×五年分)、除伐二回、間伐二回(保育間伐一回、搬出間伐一回)で、一ha当たり約二五〇万円の費用が掛かります。ニホンジカ対策のための防護柵を含めると、さらに八〇万円高くなります。一方、平成二七年度の中部森林管理局の立木販売実績(抜粋)は、スギやヒノキが主体の場合の売り上げが、一ha当たり約一五〇万円であり、木材収入によって再造林経費を賄うことができない状況となっています。低コスト造林の取組再造林を着実に行うためには、コストの削減が課題であり、課題を解決するためには、施業技術の開発・実証と施業体系の整備などを進め、事業への適用を図る必要があります。森林整備予算が減少する中、中部森林管理局管内の植栽面積は三年前に比べて二倍に増加してきています。このため、平成二六年度に局内、平成二七年度は森林管理署内に「低コスト造林推進チーム」を結成し、様々な角度からこれまでの事業実行を見直し、造林事業の低コスト化に、五つの方策を基軸として取り組むこととしています。伐採・造林一貫作業システム伐採・造林一貫作業システムとは、普通苗と比べて植栽時期が長いコンテナ苗を活用し、伐採・搬出作業と同時並行で、地拵や植栽を行うシステムです。このシステムによって、伐採・搬出に使用する高性能林業機械を活用し、末木枝条の整理や苗木運搬に利用するなどの省力化を図るとともに、コンテナ苗による植栽工程の効率化、初回下刈の省略などの低コスト化が可能となります。地拵の省力化これまでは、下刈や除伐など植栽木の保育における作業効率などを考え、植栽木が等間隔になるように地拵が行われてきました。今後はバイオマス発電利用のため、一部地域で行われてきた、末木枝条を山から搬出し、無地拵による植栽を行う取組などを拡大していきます。また、今年度は、刈払率の低減や高性能林業機械による地拵の低コスト化に取り組んでいきます。植栽本数の低減岐阜県内の国有林には、平成二五年度から二七年度までの三年間で、約一〇六ha、約二八万本のスギやヒノキが植栽されました。植栽本数は、平均で一ha当たり約二千六百本となります。スギ、ヒノキの主伐期における残存本数は、一ha当たりおよそ千本です。成長過程の自然枯死数や初回間伐から搬出利用が可能となることを勘案すると、一ha当たりの植栽本数は、千五百本から二千本が適当であると考えているところであり、今後植栽本数の低減に取り組んでいきます。下刈の省力化下刈は下草の繁茂の状況から、実行の可否を判断してきたところですが、これまでの試験研究の結果に基づき、隔年下刈の実行やカラマツのように樹高成長に優れた植栽木については、植栽後二年間で下刈を終了するなどによる低コスト化に取り組んでいきます。ニホンジカ対策ニホンジカ対策については、確実な忌避効果が確認された薬剤がなく、高価な防護柵の設置や単木のガード資材によって植栽木を保護してきました。今後は、雪の少ない地域における安価な資材による防護柵や、伐採箇所の林縁立木を利用した防護柵の設置、林縁五m程度は地拵、植栽、下刈を行わずに、かん木を仕立てるなどの、ニホンジカの進入防止対策に取り組んでいきます。まとめ森林による二酸化炭素吸収源対策の推進のためには、主伐後の再造林における低コスト化の取組が不可避となっています。国有林の事業実行を通じ、当面五年後までに四〇%の造林コストの削減を目標として取組みを深化させるとともに、得られた結果は、民有林に生かしていただけるよう情報提供してまいります。▲岐阜県内で育苗されたコンテナ苗▲高性能林業機械による枝条整理▲無地拵によるコンテナ苗の植栽MORINOTAYORIMORINOTAYORI15