ブックタイトル森林のたより 757号 2016年10月

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概要

森林のたより 757号 2016年10月

-憎悪をこめて噴霧、ショウリョウバッタ-【第303回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira前にお話しした我が家の桃源郷(小さな庭)。ここにはたくさんの生き物(住人)がいる。その住人たちは決まった時期に現れ、楽しい日々を謳歌し、そのうちに姿を消す。ところが今年は異変?がおきた。いつもと違うのである。その異変とは。まずツバメ。ツバメが桃源郷へ来るのは毎年3月半ばだ。そのうちに玄関前に巣を造って子育てを始める。雛の成長ははやく、5月中旬には巣立っていく。そして6月上旬にはまたこの親鳥が巣へ戻り、2回目の子育てを始める。この時は巣立ったばかりの子ツバメも餌運びをするので、雛の成長は早く7月上旬にはもういなくなってしまう。これが我が家のツバメの子育てカレンダーである。ところが、今年は5月半ばになっても来ない。なぜだろう。事故に遭ったのではないかと心配した。それが5月下旬に姿を見せ、前年の巣を補強して子育てを始めた。嬉しかった。雛の成長はいつもより早く、1ヶ月後の6月下旬には巣立っていった。例年なら2回目の雛が巣を離れる時期なので、2回目の子育ては出来ないだろうと思った。それが10数日後に巣へ戻ってきて、すぐに子育てを始めたのである。しかし、なぜか子ツバメがいない。このため餌を運ぶのは親ツバメだけ。雛の育ちが悪く、8月9日にようやく巣立っていった。いつもより2ヶ月も遅い巣立ちだった。雛のいなくなった巣を眺めて、「よかったー」と安堵した。××××次は金魚だ。私は毎年金魚に卵を産ませ、その子供を大きくして、また産卵させる。これを10数年続けている。金魚は年々大きくなり、今では25cmを越すものもいる。毎年4月半ば頃からメスのお腹が大きくなり、5月中旬から卵を産み始める。その数、おそらく数万頭。ホテイアオイの根にびっしり産み付けられる。数日後に孵化。しかし、これからが試練の連続。暑くなると水槽の水温が上がり死亡するものが続出し、生息数が激減。しかも狭い容器での成長は遅く、夏を過ぎてもわずか数cm。残っているのは1000匹以下となってしまう。その後も減り続け、秋にはさらに半減。そして寒い冬。この時期にも多くの金魚が死亡し、最終的に残るのは30匹くらいである。これが我が家の金魚の成長カレンダーである。ところが今年はいつものように4月頃からメスのお腹は大きくなったものの、卵を産まない。そのうちに産むだろうと思っているうちに7月下旬。金魚のお腹はスリムになってしまった。結局、卵を産まなかった。なぜ産まなかったのだろう。不思議だった。だったらあのお腹の中の卵はどうなったのだろう。糞とともに出てしまったのだろうか。こんなことを思ってしまった。××××数年前から住人になったのがトカゲ(カナヘビ)だ。しかし、数は少なく年に数匹見る程度である。それが今年はなぜか異常に多い。女房は花の手入れ中に何匹も見ているし、私も死体を2匹見つけている。そんな時娘が「お父さん、Y君にトカゲを画かせたいので捕まえて」と頼みにきた。簡単に捕れると思い「わかった」と即答。しかし、皮肉なもので捕ろうとするとトカゲがいない。たまに見つけてもすぐ逃げられてしまうのである。焦った。そんなとき溝で死亡しているのを見つけた。娘は「夏休みまで腐らないようにしておくにはどうすればいい」と聞いてきた。私は「冷蔵庫に入れておけば腐らないよ」と教えてやった。すると娘は「気持ちが悪いからお父さんのところの冷蔵庫に入れておいて」。私はムカッときたが、可愛い孫のことなので「いいよ」と返事をしかかった。しかし、止めた。それはヘビやトカゲを見ただけで鳥肌が立つという女房。返ってくる言葉が想像できたからである。とりあえずアルコール漬けにして保存した。それにしてもトカゲが多い。なぜ増えたのだろうと考えているとき女房の悲鳴。「ここにもトカゲがいた。気持ちが悪い」。××××女房の楽しみは花を育てること。狭い庭にいろいろなものを植えている。このお陰で桃源郷となっているのだ。ある日、「お父さんちょっと来て」と女房の声。そこには葉が穴だらけになった観葉植物。よく見るとショウリョウバッタの子供が群がって葉を食べていた。▲葉を食べているショウリョウバッタの子供数えただけで一鉢あたり50匹近く。どれもびっしり群がって葉を食べていた。「早く退治して」と女房。私はショウリョウバッタが可哀想だったので「葉を食べられても枯れないから、このままにしておいたら」と言った。この言葉がいけなかった。「この植物は葉を見て楽しむものなの」と言って、自分でキンチョールを噴霧し始めた。それがすごい。憎悪を込めて噴霧し続けたのである。その後、ショウリョウバッタは姿を消してしまった。ショウリョウバッタはいろいろな植物の葉を食べる。それが女房の大切にしている植物の葉が好きで、ここへ集団で集まってきたのが運命の分かれ目だった。特に子供ばかりだったのでよけい哀れに思えた。それにしてもショウリョウバッタもトカゲと同じように、なぜ増えたのだろうと不思議だった。自然界は奥が深い。だから今回の4つの出来事は、よくあることなのだろうと思う。しかし、桃源郷の主としては素直に受け入れることが出来なかった。MORINOTAYORI 14