ブックタイトル森林のたより 757号 2016年10月

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概要

森林のたより 757号 2016年10月

活かす知恵とを森林人46●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525森林文化アカデミーまで育林は「初期状態を整え、時間に委ねる」ことと覚えたし岐阜県立森林文化アカデミー教授●横井秀一間伐によってつくられた空間。間伐(育林作業)ができるのは、この状態をつくるところまで。残った木(=育てたい木)が、今後どう育つのか。この状態が、これから何十年かの出発点になる。●「育つ」を「育てる」に育林とは、森林を育てることを言います。「育てる」の主語は、もちろん「人」です。森林は、放っておいてもそれなりに育ちます。無目的なら、それでいいかもしれません。しかし、目的があるなら、それなりでは困ります。目的を果たせる森林になってほしいなら、そのために手間をかける必要があるのです。これが育林です。なお、この手間をコストと見る向きがありますが、その意義からして、手間は投資と捉えるべきです。●育林作業ができること育林のための作業を育林作業と呼びます。人工林施業の場合、それは下刈り、雪起こし、つる切り、除伐、枝打ち、間伐などです。このうち、保育対象(植栽木)に直接的に働きかける作業が、雪起こしと枝打ちです。それ以外の作業は、刈る・切る・伐るといった、他の植物を切断して除去する作業になります。もちろん、除去するのは保育対象の生育を妨げる邪魔者です。育林作業はどれも、作業後すぐには結果が得られません。雪起こしは、根元曲がりが軽減され、幹が通直になるようにと、傾いた幹を起こして、紐で固定する作業です。そうなるかどうかは、その後の成長にかかっています。枝打ちは、無節の材がほしい部位から、節のもとになる枝を取り除く作業です。無節材は、その後の肥大成長によって形成されるのです。下刈りは、邪魔者を除去することによって、植栽木の葉が十分に太陽光を受けられる環境をつくるに過ぎません。除伐は、その後のレースに参加する個体を選抜する、予選のようなものです。間伐は、育ってほしい個体が十分な葉をつけられるよう、そのために枝をしっかり伸ばせるよう、林冠に空間をつくる作業です。その個体がその空間に枝を伸ばしてスクスクと成長することを期待して。●育林作業は初期条件のセット育林作業は、保育対象がこう育ってほしいと期待を込めて、そのための環境を整えているに過ぎません。換言すれば、育林作業は保育対象がその後の時間を過ごすための初期状態をセットする作業だということです。作業後は、その状態の下で林木が育つのを見守るしかありません。あとは、時の流れとその中で起こる自然の推移に委ねるしかないのです。未来を見据えて今する作業、それが育林作業です。よりよい作業をするには、「こうすれば、こうなるよね」という、今と将来をつなぐ、根拠に基づく想像力が欠かせません。育林技術者は、その想像力を鍛えましょう。その方法は、いろいろあると思います。ぜひ、皆さんそれぞれで、考えてみてください。MORINOTAYORI 6