ブックタイトル森林のたより 757号 2016年10月

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概要

森林のたより 757号 2016年10月

【森の名手・名人編集担当公益社団法人岐阜県緑化推進委員会専務理事黒﨑隆司】※原本は長文のため、文章の一部を割愛しています。●生年月日:昭和23年3月5日生まれ●職業:桧皮採取原皮師須賀均さんのプロフィールすがひとし須賀氏は、現在全国で30名程度しかいない桧皮採取原皮師であり、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な選定保存技術者である。桧皮採取原皮師は、1000年続く伝統の技法で、伝統の道具を使って、樹齢100年から300年の桧の立木から樹皮を採取する。採取の際は、木を傷めないよう、形成層を残し、外樹皮を採取する。一度採取しても10年程度で樹皮がもとのように生成される。須賀氏は、桧に養分が上がらない時期(7月下旬から翌年5月上旬まで)に、岐阜県内をはじめ、静岡、山梨、長野、宮城など全国各地を巡り、境内林、民有林、国有林等の桧から年間4500kgの桧皮を採取している。採取した桧皮は、田中社寺㈱にて加工され、全国各地の伝統的建築物の屋根葺材として使われる。名人手を切ったり足を切ったりなんてのは、そんなに珍しいことじゃないわけ。4針縫った5針縫ったっていったって驚きもしない。だから怪我しないように物凄い気をつけることだね。そして自然の生きてる木を相手に仕事をしてるわけだから木をも大事に扱うってこと。木だってね、傷つけてしまったら何も言わないけど痛いかもしれないじゃない。私にとってこの桧、山の木というのは大事な仲間たちだから。やっぱり優しく扱って、要するに木と語り合いながら、木も自分も怪我をしないように安全に仕事していこうっていう、それはすごくあるね。縁だけなのよ。真ん中が年輪で外へ外へ育っていく、だからその上につく表面が今一番の表面が皮になるわけなのよね。一番外側の皮を採ってしまうでしょ。今度、この赤い部分が一番外側になるわけ。で、10年ぐらいでこういう厚さになると。だからこの生きている部分を除いた方がここに採れるっていうのは無いんだよね、他にね。しかもこれに繊維質と防水効果、油分がすごいんだよね。木も凄いし燃やすとすごい火力が強いのよ。そういったことで屋根に適しているっていうのを実際にだよ。今から千何百年前に100年かかったのか500年かかったのか1000年かかってそれを考え付いたかわからないけどね。そういう理由があって桧の皮ってね。だから杉はそういう効果が無いってことだよね。この皮って実際はものすごく薄くするんだよ。1mmちょっとだね。それを重ねてこの屋根のやってるところに使うんだよね。物凄く薄い皮を重ね合わせてこんなんして。釘を打つ時の金づちってあるでしょ。屋根をやるときはこんな形、さいころみたいに四角。竹の釘を打つ専門のもの。4.危険な命がけの仕事まずロープ1本で上がる仕事だから危険なのもすごいよね。落ちたら死んでしまうわけだからね。それと皮をこうやって見ればわかるように刃物持ってるよね。鉈っていうんだけど普通、鉈っていうと叩いて切るよね。刃がついててね、我々は叩くんじゃなくって鉈とは呼んでも包丁なんだよね、スーっと切れる。そういう間で砥いできれいにするわけ。だかららね。生きてるのを採ってそのまんまこういう色になるんだけど、10年サイクルでまた皮が採れるのよ。1本の木がもし200年生きてたら、10年ずつ10回採ったら100年は剥いてるかもしんないわけ。で、そういうのできますって、今から千何百年も前に考え付いた人がいるわけだよね。屋根に乗るでしょ。だから防水効果があるんだよね。雨が降っても漏らない。屋根を葺くでしょ。大体30年も40年も持つのよ。ものによっては50年もこのまま大丈夫なところもある。それだけ長い時間持つのはいろんな面で優れている。それが桧だからだよね。それと立って生きてる木から皮だけ採れるっていうのも、なかなかないのよ。例えば杉の木を同じように皮採ろうとすると身まで採れてしまう。そうすると木は枯れてしまう。これ採られてあとの部分だよね。これ皮だけを採ってるわけ。このこっから下、甘肌っていうんだけどね。ここが蟻がすごい寄ってきたり、いろんな虫たちもこれかじったりするの。甘いからね。こっからわずかな部分しか木は生きてないのよ。形成層っていう部分しか生きてない。だから切っても生きているのはわずかなんだよね。それで真ん中からどんどん木って死んでいくわけだよね。生きてくのは外側だけなんだよね。外へ育つわけなんだから。だから水があげてるのは木のには5時にはなってないかもしれない。3.良質な桧の皮を採りたい今一番の私の本音はやっぱり弟子を育てることだね。一人でも優秀な弟子が育つことかなあ。もう少し前だったら、やっぱり自分の採った皮が、少しでも良質のもの採らなきゃならないんだけど、それがまあ一般の方がかなり知ってるところで使われるっちゅうことかな。例えば今、出雲大社の屋根の葺き替え工事をやっているのよ。何年かの計画で、それを数年前に我々、会社の方からそこを修理するんで材料が必要ですと、そのための材料を採りますと。出雲大社をやるがために我々は材料を採るわけ。私の採ったものがその屋根にのる、神様のお住まいの屋根になる、そこに使われるっていう喜びがあるよね。いろんな学者や先生たちが調べたとこによると1300年の歴史はあると言われているの。この桧の皮で屋根にちゅうこと。立ってる木から採るわけだからね。倒した木じゃないか桧皮採取の様子剥いた桧皮MORINOTAYORIMORINOTAYORI9