ブックタイトル森林のたより　759号　2016年12月

概要

森林のたより　759号　2016年12月

●詳しい内容を知りたい方はＴＥＬ０５８５ー２３ー１１１１内線（442）揖斐農林事務所までモデル事業提案に向けた支援モデル事業提案に向け、もう一つの不安材料である「ニホンジカ被害対策」と「植栽から保育にいたるトータルコストの低減」について検討を始めました。（先進地視察）当初は、「獣害防護柵の設置」を考えており、過去に防護柵が設置された郡上市美並町地内の皆伐・再造林事業地を視察しました。しかし、山林の全周を防護柵で囲むための多大な設置コストに加えて、ニホンジカが、防護柵を飛び越えて侵入した後の植栽木の被害状況を目の当たりにし、不安を感じました。そこで、別の対策として、郡上市八幡町及び白鳥町管内で実施されているツリーシェルターによる単木保護の取組状況について情報収集を行いました。また、今回のモデル事業で使用する苗木の検討を行うにあたり、郡上市八幡町地内の事業地も視察しました。揖斐川町に対して、コンテナ苗・セラミック苗・裸苗の生長比較結果を報告し、コンテナ苗の使用を提案することとしました。以上の現地検討・先進地視察の結果を踏まえ、揖斐川町に対して獣害対策方法並びに造林・保育コストの低減について助言を行うとともに、県に対する「森林資源確保・育成事業提案書」の作成支援を行いました。さらに、揖斐川町谷汲地内で「くくりわな」を使用してニホンジカの捕獲を行っている団体があり、この団体との連携についても提案をしました。連携に際して、捕獲団体のワナ購入にかかる費用負担をなくすため、森林管理署からのくくりわなの貸与を受けられるよう調整を行いました。この結果、20セットの貸与を受けることができました。提案事業を行うにあたって出てきた課題今回のモデル事業地『谷汲岐礼火洞』は、水源かん養保安林に指定されており、当該地域の植栽にかかる指定施業要件が、スギ2 , 200本／ha、ヒノキ2 , 400本／haとなっていました。このため、当初、考えていた植栽予定本数1 , 500本に対して、植栽経費・ツリーシェルター等の設置経費等が掛かり増しとなりました。皆伐・再造林事業地の確保に向けた今後の取組み（パルプ・燃料用資材の有利販売）当管内は、他の管内と比べて、Ｃ・Ｄ材とよばれるパルプ用材・燃料用材の占める割合が大きいことから、損益バランスを確保するため、売上額ではなく、森林所有者への実質的な還元額に着目した有利販売条件を検討していきます。（森林所有者に対する提案）今回のモデル事業で実証調査を行った結果を基に、林業経営として成り立つ皆伐・再造林の提案を森林所有者に対して行えるよう森林組合等を指導していきます。（保安林における指定施業要件の緩和）皆伐事業後の「植栽」から「主伐」までの経費の低減を図るためには、保安林指定施業要件の緩和が必要であり、現地の状況を勘案しながら変更手続を進めていきます。（林道等基幹道の整備）揖斐管内は急峻な地形が多く、他の地域と比べて、林道等の基幹道開設が遅れているのが現状です。今後、皆伐・再造林による林業経営を推進するにあたり、揖斐川町と連携して基幹道の整備を行っていきます。また、基幹道整備と併せて、木材の集積所となる中間土場の整備も進めていきます。瀬貝月地内』、『谷汲岐礼地内』の２箇所の事業地を選定しました。机上で選定したこれら2箇所の事業地について、実際の還元額を予測するため、揖斐川町・森林組合に岐阜県森林組合連合会（以下「県森連」という。）を加えて現場調査を実施しました。調査の結果、皆伐における収支見込みは、次のとおりです。この調査では、有利販売を行う県森連と協働することで、出材先を見越した原木価格や造材方法などを検討し、市況データによる売上額ではなく、森林所有者への実質的な還元額について検討することができました。この結果を踏まえ、「モデル事業実施予定地」として『揖斐川町谷汲岐礼火洞地内』を選定しました。ツリーシェルターの設置による獣害対策効果谷汲岐礼火洞の現況ツリーシェルター内での植栽木の成長【３年目】事業地別収支予測（単位：千円）伐出費運搬費・販売手数料等費用計木材売上額収入計損益（還元額）４,０７２１,８８７５,９５９５,１７５５,１７５▲７８４４,３９０２,６２８７,０１８８,００８８,００８９９０区分久瀬貝月地内谷汲岐礼地内MORINOTAYORI17