ブックタイトル森林のたより 759号 2016年12月

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概要

森林のたより 759号 2016年12月

山腹斜面の緑化について現在、崩壊斜面を復旧する山腹緑化工は、種子付きの植生マット工や植生基材吹付工が主体となっています。配合する種子は、低木性のマメ科のヤマハギやコマツナギであることから、これらが繁茂し高木林への移行が進まない傾向があります。このため、近年、岐阜県内では行われていませんが、安価で生長も早く、林道法面などにも自生できるヤナギによる挿木に注目し、山腹斜面での有効性を検証しました。調査方法調査した場所は、「マサ土」と呼ばれる風化花崗岩地帯である岐阜県恵那市上矢作町奥達原地内の山腹復旧工事です。調査方法は、対象地に分布する3種類の土壌(黒土、赤土、マサ土)毎に、挿入深及び挿木の太さ別の生存率を比較しました。(図1・写真1)観測結果【土壌による違い】(表1)黒土とマサ土に比べ赤土の生存率が低いことがわかりました。※降水量が極端に少ない期間があり、全体に生存率が下がっています。【挿入深さによる違い】(表2)深く挿すより浅く挿した方が枯れが少ないことがわかりました。【太さによる違い】(表3)黒土では、「太い挿木」の生存率が高く、「細い挿木」は生存率が低くなりました。マサ土では違いがあまりみられませんでした。まとめ崩壊地の斜面状況として、黒土及びマサ土の場合は挿木の有効性が認められました。なお、黒土の場合は、太い挿木の方が良いと思われます。ただし、挿木は、土壌硬度が低い、やわらかい土壌でないと施工が困難という欠点があります。特に、山腹斜面は土壌硬度が高く15cm挿入することさえ非常に困難です。写真2に2本のヤナギが写っています。上のヤナギは、地面に挿さず転がしていたものです。下のマサ土に挿していたヤナギより、芽も大きく生長し根の数も多いことがわかります。ヤナギは水分の供給があれば土に挿さなくても成長すると考えられます。最近では、ラス金網を併用する植生基材吹付工や亀甲金網を併用した伏工が山腹緑化工として多く使われているため、写真3のように、ラスや亀甲金網に挿し込むだけでも有効ではないかと考えています。最後にヤナギによる挿木は非常に安価な工法で、渓間工周辺の緑化はもちろん、山腹斜面での早期緑化工法としても大変有効であると考えます。岐阜県ではあまり行われていませんが、ぜひ取り入れてみてください。●詳しい内容を知りたい方はTEL0573ー26ー1111内線(311)恵那農林事務所森林保全課まで治山・林道研究課題治山、林道の各研究会では、日頃の業務で直面する課題について、調査・研究を行っています。今年2月に行われた発表会(本誌752号16?17ページ)で発表された研究課題を紹介します。恵那農林事務所森林保全課片田茂之?挿木による山腹緑化?さしき土壌生存率挿木(本)生存(本)46%11%47%12311262623黒土赤土マサ土※観測期間H27.6.29~H27.10.7(表1)土壌別生存結果挿木仕様図マサ土(黒土入り)挿入深さ生存率挿木(本)土壌生存(本)33%7%45%63%16%50%27%42%515726151411111212黒土赤土マサ土黒土赤土マサ土深い(25cm)浅い(15cm)(表2)生存本数比較表(深さ別)太さ生存率挿木(本)土壌生存(本)75%18%50%33%6%47%43%30%6226198114181519黒土赤土マサ土黒土赤土マサ土太い(直径2~3cm)細い(直径1~2cm)(表3)生存本数比較表(太さ別)写真2写真1図1写真3MORINOTAYORI 20