ブックタイトル森林のたより 761号 2017年02月

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概要

森林のたより 761号 2017年02月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹フクジュソウⅠ138寒い時期に見ても何か暖かみを感じる花、フクジュソウ。キンポウゲ科フクジュソウ属の多年草であるフクジュソウ(Adonis ramosa)は、日当たりの良い県南部地域であれば2月下旬から咲き始めます。日本のフクジュソウは固有種で、北海道や本州、四国の温帯性落葉広葉樹の林縁や林床で、石灰岩地帯を好んで生息します。関西には少なく、僅かな自生地も近年減少傾向にあり、国のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に分類されていたこともあります。自然の状態では落ち葉の間から短い茎を出し、その上に直径4cmほどの黄金色の花を咲かせます。咲き始めの草丈は数cmなのですが、次第に茎や葉を伸ばして数個の花をつけるようになります。葉はニンジンの葉に似て細かく切れ込み、上面も下面もほとんど毛が無く、日増しに伸びて30cm程度になってからも花を咲かせます。5月にはコンペイトウのような形の実をつけて、落葉樹林全体が一面の若草色に覆われる6月には葉は枯れて、約3ヶ月間にわたる地表での生育を終えて休眠に入ります。フクジュソウは初春に花を咲かせ、夏が始まる前に葉による光合成を終わらせて、翌春まで半年以上を地下で過ごす典型的な春植物(スプリング・エフェメラル)なのです。フクジュソウと言えば、以前日本では一種だけしか自生しないとされてきましたが、最近はフクジュソウのほか、キタミフクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、そしてシコクフクジュソウの4種に分けられています。フクジュソウは旧暦の正月(現在の2月ごろ)に咲き出すことから、江戸時代には新年を祝う「福寿草」とされ、ナンテンと併せて「難を転じて福となす」という縁起物として正月の床飾りに使いました。地域によってはガンジツソウ(元日草)とかツイタチソウ(朔日草)とも呼ばれますが、「日本植物方言集(草本類篇)」などには、北海道ではマングサ、青森ではマゴグサ、岩手ではマグサグ、秋田ではフクジンソウ、福島ではガンジツソウ、徳島ではキンバイソウなどと呼ばれていたことが記されています。アイヌの人々はフクジュソウやキタミフクジュソウをチライアパッポ(イトウの花)、チライキナ(イトウの草)と呼び、この花が咲き始めると川にイトウ((魚偏に鬼))が遡上してくるため、漁猟の支度に取りかかる目安としていた花なのです。▲群生するフクジュソウMORINOTAYORI 4