ブックタイトル森林のたより 762号 2017年03月

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概要

森林のたより 762号 2017年03月

おわりに今後、ホソカタをカシナガの防除に利用するには、人工飼育の際に、このような点を考慮しないと、カシナガの坑道に入れないホソカタを生産するような失敗をする事になるかも知れません。また、ホソカタがどれくらいの幼虫を捕食するのか、どれくらい産卵するのかなど、不明な点が多く残されています。今後、またナラ枯れについて研究する機会があれば取り組んでみたいテーマです。森林研究所●大橋章博●詳しい内容を知りたい方はTEL0575ー33ー2585森林研究所までカシナガが穿孔して枯れたナラ類にはヨシブエナガキクイムシ(以下、ヨシブエ)という、カシナガより一廻り小さなキクイムシ(写真)が多数穿孔します。この虫もカシナガと同じく養菌性キクイムシですが、生きた木を枯らすことはありません。そこで、大きなホソカタはカシナガの坑道から、小さなホソカタはヨシブエの坑道から発生したのではないかと予想しました。これを確かめるため、それぞれの虫について体の最も幅の広い部位の長さを計測しました(図2)。その結果、ホソカタは2つのグループに分かれ、小さなグループは最大幅がヨシブエとほぼ同じとなり、大きなグループはカシナガよりやや小さな最大幅となりました。このことから、ホソカタの大きさは寄主の坑道の大きさに制限されていると考えられました。い筒型で、脚は体にぴったりとくっつくような構造になっており、キクイムシ類の坑道に入るのに適した体型をしています(写真)。この特徴的な外見と稀少性から、かつては虫マニア垂涎の甲虫でしたが、ナラ枯れの拡大とともに各地でみられるようになりました。2つのホソカタナラ枯れ被害木から出てきたホソカタを調べてみると、体の大きさにかなりばらつきがあり、大きなホソカタと小さなホソカタがいることに気付きました(図1)。この大きさの違いは何によるのでしょうか。はじめに平成9年に岐阜県で初めて被害が確認されたブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)は、平成22年にピークを迎え、その後は減少傾向にあります。その原因として様々な要因が指摘されていますが、天敵の働きもその一つです。平成25?26年に大発生したマイマイガが疫病菌や寄生蜂によって終息したように、突発的に大発生した昆虫が天敵により終息する事例は多くみられます。そこで、今回はナラ枯れの原因となる「ナラ菌」の媒介者であるカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の天敵について紹介します。カシナガの天敵カシナガは坑道の入口で幼虫を親虫が世話をするため、天敵の種類は少ないものの何種か知られています。このうち最も有力な天敵と考えられているのが、ルイスホソカタムシ(以下、ホソカタ)です。本種はキクイムシ類の坑道に入り、幼虫を捕食します。とても細長カシノナガキクイムシの天敵ルイスホソカタムシ図1ルイスホソカタムシの体長の分布図2各昆虫の最大幅の分布写真左から、カシノナガキクイムシ、ルイスホソカタムシ、同、ヨシブエナガキクイムシMORINOTAYORI 20