ブックタイトル森林のたより 766号 2017年07月

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概要

森林のたより 766号 2017年07月

●詳しい内容を知りたい方はTEL050ー3160ー6090(代)岐阜森林管理署まで国有林の現場からニホンジカの職員捕獲について10岐阜森林管理署主任地域林政調整官大島愛彦野生鳥獣を捕獲するには狩猟免許が必要です。林野庁では農林業被害の防止・軽減、生態系被害の抑止のため、またニホンジカ対策として柵やネットも大事ですが、国有林の管理者として自衛捕獲が必要との観点から、国有林野職員が自ら有害鳥獣捕獲を実施できる仕組みに取り組んでいます。今回はこの仕組みと、私の職員捕獲体験談を紹介します。ニホンジカの分布域の拡大と生息頭数の増加ニホンジカの生息分布は県北部、東部にまで拡大し、近年は高標高域でも目撃されるなど県内のほぼ全域に分布し、県内の生息頭数は約5万頭で増加傾向にあります。昨年度に自然環境保全課(現環境企画課)の依頼でニホンジカの食害調査(森林下層植生の衰退度調査)に森林管理署も協力し、2年前の調査結果と比較して被害の拡大を実感しました。岐阜県が策定した第二種特定鳥獣管理計画(ニホンジカ)では、目標生息密度を5頭/km2以下に抑えるため、年15,000頭の捕獲を目標にしています。生息密度に関しては1~2頭/km2で農林業被害があまり大きくならない密度、3~5頭/km2で自然植生にあまり目立った影響が出ない密度だそうで、この密度に調整するために狩猟、有害鳥獣捕獲、個体数調整で捕獲圧を高めるとされています。捕獲するシカは雌を狙います。シカは繁殖期に雌多数、雄1頭の群れを作るため、雄をどれだけ捕獲しようと翌年に産まれるシカの数は変わりません。わな猟では雌雄を選べませんが、個体数調整では大切なポイントです。国有林の職員捕獲の仕組み森林管理署等の職員は、国有林野事業職員研修規定に基づく鳥獣保護及び狩猟に関する研修を過去3年以内に履修した者であれば、狩猟免許が無くても有害鳥獣捕獲ができます。岐阜森林管理署では昨年6月に岐阜県で初めて研修会を開催し、森林管理署等の職員58名が参加し研修を履修しました。狩猟免許を取得しました!前述の研修会を私も履修したのですが、国の森林総合監理士(フォレスター)として猟友会の人たちと対等に話をするには相応の知識を身に付ける必要があると考え、狩猟読本を1冊丸ごと勉強し、私の家は愛知県ですので、愛知県で狩猟免許(わな猟)を取得しました。銃の免許も考えたのですが、銃の保管が大変なため見送りました。もとより資格を取ることが目的ではなく、防災課にいたときに防災士を取ったときと同じで、勉強して知識を得ることが目的ですので目的は達したと自負しています。職員捕獲の実施とその結果4月号、6月号でも紹介したとおり、七宗国有林を含む森林共同施業団地を林野庁のケーススタディ(事例研究)地区に設定しており、ケーススタディ地区の1事例として岐阜県初の職員捕獲を実施しました。実施者は七宗森林事務所の森林官と森林技術員、そして私の3人。昨年4月から全職員に依頼してニホンジカの目撃情報を集めており、目撃情報の多い箇所にくくりわなを設置しました。シカの足跡や糞からシカの通り道を探し、わなを仕掛ける場所を決めます。スコップでわなの大きさ分の穴を掘り、その土を周囲に捨てるとシカが警戒しますので、袋に入れて別の場所に移します。人間の臭いを付けないように手袋をして、シカ道はできるだけ踏まないように注意します。わなを設置したら落ち葉などでカモフラージュして、谷水を撒いて馴染ませます。ここも水道水は使わず、シカに気付かれない工夫と努力が大切です。わなの前後には太めの枝を置いて、そこをまたがせてシカにわなを踏ませる作戦です。最後に設置者などを明記した標識を、風で揺れたり音がしないようにしっかりと取り付けます。その後は現地駐在の森林官が見回りを行い、シカが掛かったら猟友会に依頼して止めさし(とどめを刺す)を行い、国有林内に掘った穴に埋設します。七宗国有林の昨年度の職員捕獲実績は1頭(猟友会への委託捕獲などを含めると59頭)。別の場所で職員捕獲したシカを搬出したときの感想として、林道の上に設置したわなであればシカを下に落とせばよいのですが、林道の下だと死んだシカを道まで引き上げるのは大変な作業です。実務を経験して、シカとの知恵比べは狩猟本能をくすぐりますが、事後処理は大変だと感じました。ニホンジカ食害防除対策検討会にご参加ください昨年度は会場の関係で国有林のある市町村に限定して開催しましたが、今年度はすべての市町村を対象に開催予定です。時期は秋頃、場所は七宗国有林。午前は座学、午後は森林技術・支援センターが設営したいろんなタイプのシカ柵や幼齢木ネットの試験地の見学など現地研修を行います。近くなりましたら案内文書を送りますので、ぜひ国有林主催の検討会にご参加ください。▲職員捕獲(わなの設置)▲くくりわな(笠松式)▲鳥獣保護及び狩猟に関する研修MORINOTAYORI 10