ブックタイトル森林のたより 797号 2020年02月

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概要

森林のたより 797号 2020年02月

活かす知恵とを森林人85●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー准教授●津田格そろそろ春の訪れ??山菜の王様、タラノキの話?露地ハウスなどの室内伐採・採取芽ごとに切断温度・水管理収穫に生えるアカメガシワなども同様の繁殖生態を持っています。この性質を利用して、掘り取ったタラノキの根を短く切って植え付けると新たな株が簡単に作れます(この方法を根挿しと言います。鉛筆ほどの太さの根を長さ15?cm位に切ると成功しやすいです)。大きめの植木鉢などで育てることもできるので試してみてください。森林文化アカデミーでは特用林産物に関連する学びとして、毎年、タラノキの繁殖生態の観察、根の採取、根挿しを実施しています。タラノキは、山の恵みを利用するのに樹木の生理・生態の知識が役立つことを理解する良い素材となっています。注)山には所有権があり勝手に山菜などを採ることはできません。自分の土地以外は所有者の了解を得るなどして採取するようにしましょう。寒い日が続き、春が待ち遠しい人も多いのではないでしょうか。そんな中、スーパーなどの野菜売り場では一足早く山菜類が並びはじめています。特によく目にするのは山菜の王様とも称されるタラノキの新芽、「たらの芽」です。しかし、まだ寒いこの時期に山の中でたらの芽を探しても、その芽は収穫できるほど膨らんではいないはずです。お気付きのように、この時期に売られているたらの芽は促成栽培されたものです。しかし、成長が早くすぐに大きくなるタラノキを株ごと温室で育てるには、コストもスペースも必要です。そのため、タラノキの株は通常は露地で育てられています。そして、まだ寒い時期にそれらの株から幹を伐採・採取し、ハウスなどで温度を保って芽を出させるのです。その際、長い幹のままで使うと露地と同じように最初は先端の芽(頂芽)しか膨らみません。これは頂芽優勢と言って、頂芽で作られたホルモンの作用により下の芽(側芽)の成長が抑えられているためです。頂芽を収穫するとその抑制が外れ、2番目の側芽が膨らみます。そのまま上から順に収穫することもできますが、収穫時期がずれてしまいます。そこで、収穫の時期を揃えるために、数多くある側芽の上で幹を切り分けていきます。この操作により個々の側芽は頂芽優勢の支配から逃れ、満遍なく芽が膨らむのです(図)。このようなたらの芽の栽培方法を「ふかし栽培」と言います。この方法は挿し木に似ているように思えますが、発根させるわけではないので、芽の収穫は一回限りです。そう聞くと破壊的な方法に思われるかもしれませんが、心配ありません。伐採した元株からは新たに萌芽(ひこばえ)が出てきて、来シーズンには再び収穫できるサイズになるからです。また、この方法ではタラノキ特有の棘が作業の邪魔になるため、通常は棘のない品種が使われます。棘のある野生種でも同様の方法で収穫できるので、機会があれば試してみてください(ただし野生種の場合、一定期間の寒さを経ないと芽が動き出しません。時期が早すぎると芽が膨らまないので、3月以降に行うのが無難です)。また、タラノキは親木の根から発芽して増殖する性質(根萌芽)があります。大きなタラノキを見かけたら、その周辺を探してみましょう。きっと小さなタラノキがあるはずです。種子から生えたものも中にはあるのかもしれませんが、多くは根で繋がっています(写真)。似た環境タラノキの「ふかし栽培」の流れ▲自然下で根萌芽により増えているタラノキの子株(矢印)MORINOTAYORI 12