ブックタイトル森林のたより 797号 2020年02月

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概要

森林のたより 797号 2020年02月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹ハコベⅡ174今回もハコベの話をします。ハコベの名について、古名のハコベラに由来することを前回紹介しましたが、他にも数多くの別名があります。例えば夜には閉じていた小さな白い花が、朝日を受けて盛んに開くことを意味する「朝開け」が転訛した「アサシラゲ」、ウサギを捕らえる罠(わな)の餌や飼育用の餌としたことに由来する「ウサギグサ」、捕らえたスズメの餌とした「スズメグサ」などがあります。私が最も馴染みある呼び名は「ヒヨコグサ」で、実際に今から40年以上前に、「このヒヨコグサの図鑑名はなんですか」と聞いたことを思い出させてくれるのですが、なんと英語でもヒヨコの雑草を意味する「chickweed」と言うのです。ここで言うヒヨコとは、ニワトリの子どもを指すのでは無く、小鳥を総称した呼び名です。俳人であり歌人であった正岡子規も「カナリヤの餌に束ねたるはこべ哉(かな)」と詠んで実際に餌として与えていたようです。ハコベはタンパク質やビタミンB、Cなどに富む野草として七草粥に入れられ、生薬では繁縷(はんろう)と呼んで、利尿や淨血、催乳などに用いられます。また民間療法では気管支炎やリウマチ、関節炎に効果があるとされ、時にはダニによる疥癬(かいせん)の治療にも用いられました。昔は、ハコベを炒って粉にし、塩を混ぜて歯磨き粉に使っていました。大阪の医師であった寺島良安が編集した挿絵入り百科事典『和漢三才図絵(1713)』には、「生のハコベをしぼってとった青汁を、塩とともにアワビの貝殻に入れて焼き、乾けばまた青汁を加えるということ七度におよぶ、・・・」という意味の記述があり、これを指先につけて歯を磨いたようです。昨年このことを知人に話したら、現在大阪で販売されている「はこべ塩歯磨」を見つけて送ってくれました。ハコベは私たちにはなじみが深く、日本でも中国でも民間薬として利用されてきましたが、その有効成分については充分わかっていないのが現状です。さて、前回紹介したようにハコベ(Stellaria media)は冬でも日当たりの良い場所では、小さな白い花を咲かせます。近づいてよく見ると、花の形は星形をしており、属名のStellariaもラテン語の「stella(星)」が語源となっています。花弁は一見10枚のように見えますが、実際は5枚で、1枚の花びらが根元まで2つに深く切れ込んでいるのがわかります。寒い冬、その寒さに負けずひっそりと咲くハコベの観察に出かけてみて下さい。▲市販されている「はこべ塩歯磨」MORINOTAYORI 4