ブックタイトル森林のたより 806号 2020年11月

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概要

森林のたより 806号 2020年11月

シリーズ森林文化の3研究実践と岐阜県立森林文化アカデミー課題研究公表会要旨森と木のクリエーター科木工専攻清水貴康曲物生産者ごとの道具や技法を調査し、技術交流を図る-業界の発展と自身の起業のために-その結果を「曲物ミーティング」と題した技術交流会を開催し、評価いただくこととした。3.実践1―調査―様々な道具や技法について調査を行ってきたが、文字数の関係上、本要旨には木バサミと側板・底板の組み立て方法についての調査結果のみを記述する。木バサミとはお湯などで熱を加え、曲げた木を丸くとどめておくために部材となる板を挟み、口で留める道具である(左図)。●早川曲物(岐阜県中津川市)の木バサミ早川曲物は現在3代目で、妻と母親の3人で営んでいる。主に柄杓やせいろなどの消耗品を大量に生産。その種類は200にも及び、製作するスピードが速いのが特徴。先代である父親からその技術を継承しており、伝統的な道具や技法を使った多品種大量生産グループといえる。木バサミの特徴としては3つのグループの中でサイズが一番大きく、部材を挟むことのできる範囲を1.背景と目的私は、職人の後継者不足問題の一助になれないかと考え、本校に入学。その中で、需要が多いにも拘わらず、生産者の減少している曲物業界に着目し、自ら生産者として起業することを決めた。調査すると、同じ曲物を生産しているにも拘わらず、各生産者が様々な道具や技法を採用していることが分かった。そして、横のつながりが少ない今、生産者同士の情報共有を求める声も少なくない。そこで、私は各生産者の道具や技法を調査し、その結果を発表する場を設け、各生産者との技術交流を行えないかと考えた。2.研究対象と流れインターンシップで訪問した早川曲物(岐阜県中津川市)を含め、全国14の工房を調査した。調査の結果、生産者は1多品種大量生産2作家作品3漆器産地の3つのグループに分けられることが分かった(下図参照)。実際に14の生産者の工房へ訪問し、調査した。その中でも伝統的な道具や技法で製作している早川曲物に対して他の生産者(特に6社)がどのような道具や技法を採用しているかを比較。広くとれる為、小さな柄杓から大きなせいろをひとつの木バサミで製作出来る。●花野屋(長野県塩尻市)の木バサミそれに対して漆器産地グループは少品種大量生産が特徴で、花野屋の場合はパート従業員を数名採用している。伝統的な木バサミでは技術がないと均等な圧力で部材を挟むことが難しい作りとなっており、扱い辛い。そこで、その問題を解消したのが左図の木バサミで、印の部分をボルトにすることで、部材を挟む際の圧力の微調整を可能にし、誰が扱っても正確な製品が出来るように改良されている。●じほうどう工房(滋賀県日野町)の木バサミ少品種少量生産である作家作品グループのじほうどう工房の木バサミは左図のように伝統的に木を使用する口の部分にホース(ゴム素材)を使用している。これは、身の回りの物を有効活用し、部品を作る手間を省いた方法である。曲物に関しては修業して教わったわけではなく、ほぼ独学であるとのことで、曲物業界以外の新しい発想MORINOTAYORI 16