ブックタイトル森林のたより 806号 2020年11月

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概要

森林のたより 806号 2020年11月

場所岐阜県立森林文化アカデミー実施内容・調査内容の報告・道具や技法について協議・産地の見学…小坂屋漆器店参加者・早川曲物(岐阜県中津川市)・木地屋西為(岐阜県高山市)・小坂屋漆器店(長野県塩尻市)・近藤奈央(徳島県神山町)・博多曲物玉樹(福岡県志免町)・栗久(秋田県大館市)※栗久は道具と作品の展示のみ道具や技法について協議協議では、じほうどう工房の木バサミについて多くの意見があがった。伝統的な道具の場合、左図のように修理品にも使用することが出来るように設計されている。これがホースであった場合、図のような使い方ができない。伝統的な道具や技法は先人たちの知恵がもたらした道具である。以上のように、同じ曲物製作でありながらグループごとにより道具や技法の違いがみられた。側板と底板の組み立て方法曲物の構造は大きく側板と底板があり、そのふたつを組み立てることで容器としての機能を持つ。●早川曲物(岐阜県中津川市)の組み立て方法伝統的な組み立て方法としてはまず、側板を完成させてから、そのサイズに合わせて底板をひとつひとつ成形、現物合わせで組み立てを行う。●栗久(秋田県大館市)の組み立て方法早川曲物と同じ多品種大量生産グループである栗久の技法は、側板の方を底板に合わせて、同時に組み立てていくものである。こうすることで、底板をひとつひとつ成形するという手間のかかる作業を省いた、従来ではなかった新しい技法である。効率的に製作するという目的に対して早川曲物のように技術を鍛えるのか、栗久のようにアイディアで勝負するのかでの違いが出ている。以上のように同じグループの中でも考え方の違いにより道具や技法に差が出来ている。4.実践2―技術交流―●曲物ミーティング概要日時2020年1月25日(土)26日(日)の詰まった理にかなった道具であるということを改めて認識する機会となったことに加え、自身では調べきれなかった新しい発見をすることが出来た。しかし、新しい道具や技法を否定するばかりではなく、前述した栗久の底板と側板の同時組み立てについては採用したいなどの声が複数上がった。上記のように、様々な新しい方法に対して各生産者がそれぞれの立場で協議しあう場を提供できたということは非常に価値のあるものだと感じた。技術交流会が横のつながりを作る福岡県にある博多曲物玉樹さんには後継ぎ予定の息子がおり、どこに修業をさせようか考えていた最中、技術交流会に参加。旧知の間柄である栗久の道具や技法をいくつか聞いたことで、栗久へ修業に行かせたいという気持を固めた。この会を通じてつながる輪が出来たのは技術交流会の意義を感じた場面であった。以上から、現在では生産者が少なく、各地域に点在している為、中々技術交流がされてこなかったが、生産者が多くいた時代に自然と行われてきた技術交流をこのような企画を実施することで、再現できたと感じ、大きな成果を得られたのではないかと考える。5.評価参加者からは以下の意見を頂いた・プロがプロを評価する技術交流会は業界初なのではないか(早川曲物)・この交流会で得られたことは今後の曲物人生の中で貴重なものとなった(博多曲物玉樹)・来年も開催してほしい(近藤奈央)以上のように前向きな意見が多く、一定の評価を頂けた。6.まとめ各生産者が採用する道具や技法はそれぞれの目的や環境、考え方により異なるものであると感じ、自身の目的を明確にする必要があると考える。今後、私は東濃ひのきや木曽ひのきなどの地元の材を使って大量生産を目指していきたい。経験を積んだ後は、「曲げコーデ(コーディネート)」と題したセミオーダーシステムを導入することを検討している。つまり、創業当初は早川曲物の道具や技法をベースに実務経験を積み、将来的には多品種少量生産を目標とし、既存グループとは違う戦略をとることで同業他社との差別化を図る方針である為、それぞれの領域で適した道具や技法に柔軟に対応していきたい。そして今回、全国各地のプロの意見を聞けたことは、1人の職人に教わる元来の子弟制度では叶わなかった貴重な経験が出来たと感じている。この研究成果を活かしながら、実践経験を積み、立派な生産者になっていきたい。MORINOTAYORI17