ブックタイトル森林のたより 808号 2021年1月

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概要

森林のたより 808号 2021年1月

ンによって3つの目的の活動計画を作成した。たとえば企業主催者のグループでは、森づくりの参加者について「活動から学びを得られていない」などを分析し、そこから、受益者が「観察を通じて森の変化や森の機能を理解できるようになる」という目標を定め、この目標へ向けた活動内容として「意識の高い従業員が自主的に社会貢献活動に取り組めるしくみ」などを設定した。3?2.森の目標と計画構築調査フェーズで行なった試験のうち簡易透水性試験では、「森の北側と南側のエリアの透水性が悪く、中ほどの斜面の透水性がよい」ことがわかった分。析フェーズでは、「透水性が悪く水源涵養機能が発揮できない箇所を保全対象とし、踏み荒らしを抑制し、粗放的な管理で植物の成長に任せる」方針とした。計画フェーズでは、まず3種類の活動計画の機能を元にゾーニングを作成した。道の駅からアクセスの良い斜面下部に「広場ゾーン」を、斜面上部に「森の学びと遊びのゾーン」を配置した。「森の学びと遊びのゾーン」同様に森の計画構築にあたっては、まず受益者である森について、森林管理者のインタビューや簡易透水性・土壌貫入試験を実施し、計画構築に必要な基礎情報を収集した。その後、試験結果の分析結果および先行して策定した活動計画に基づき森の目標、整備計画を構築した。2?3.有効性の評価研究の有効性は2段階で実施した。まず活動の計画構築で分析・計画フェーズのワークショップに参画した主催団体に、従来の計画構築方法と比較してどうであったか、アンケートと直接の意見聴取で評価をいただいた。一方、作成した計画の実効性については、企業の森アドバイザーI氏に計画を見せた上で意見をいただいた。3.結果と考察3?1.活動の目標と計画構築インタビューなど調査フェーズで行なった結果、「フィールド内の治山工事により活動の阻害リスクを抱えている」、「社員に限らず地域の学生を参加対象にした社会性の高い活動を実施している」など、活動や受益者の背景を整理できた。分析フェーズで実施した環境教育プログラム試行による受益者の理解では、「受益者は環境教育に関する関心や意識は高いものの、森についてより詳しい知識を知り得ていない」ことや「これまでのプログラムでは身近なものや現地の素材をあまり活用できていなかった」など主催者にとって新たな気づきがあった。計画フェーズでは、ディスカッショは、さらに「土壌回復ゾーン」と「生物多様性ゾーン」と「里山利用」の3つのゾーンに分けた(図3)。次にゾーンごとに目標植生とこれまで同様の整備を継続した場合の予想植生図と管理計画(図4)を作成した。これまでは植栽密度を低くして公園に近い管理をしていたものを、シカ害対策の強化や土壌や環境に合わせた植栽など、活動計画に応じた森の整備計画を策定した。その結果、これまで曖昧だった活動計画と森の整備計画がつながり、一貫するようになった。3?3.評価結果主催者へのアンケートや意見聴取の結果では、「自分たちの活動の方向性が見通せた」、「互いの役割を尊重し活動団体同士のつながりが強化された」など、計画策定や活動団体の意識などの改善効果が見られた。成果物の計画についての企業の森アドバイザーの評価では、「これまで1人の主催者の頭の中に暗黙化されていた計画が整理・可視化され、主催者全員で共有できるようになった」、「経営者に活動の価値を明確に説明できるようになった」など従来の計画以上の実効性を確認できた。他にも「活動頻度や参加者意欲が低い企業の森活動の計画構築に取り組んでこそ、この手法の真意が証明できるのでは?」との意見をいただいた。これに対しては、企業の森活動などの個々の活動計画構築より前に、さまざまな利害関係者を考慮したCSR戦略へ検討し直す必要があると考えられる。4.まとめ社会的インパクト・マネジメントを企業の森活動の計画構築で実践し、活動の未来を見通した共通の地図を描く方法として有効性を示すことができた。今後は構築した計画に従いPDCAサイクルを実施することで、活動の効果が定量・定性的に理解され、効果的な取り組みが継続することが期待される。社会的インパクト・マネジメントをCSRにより効果的に使うことは、環境や社会的へのマイナスの影響を減らすだけでなく、積極的にプラスの影響を増やす経営へ向かう可能性が見出せると考える。このような動きが企業に広まり、地球の持続的発展の達成に向け大きく前進することを期待する。引用文献・神山智美2009環境CSRとしての森づくり事業への法的規制を考える人間環境学研究第7巻2号,13-7142・社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ2018社会的・インパクト・マネジメントガイドラインVer.1図3ゾーニング図4予想植生図と管理計画MORINOTAYORI7