ブックタイトル森林のたより 813号 2021年6月

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概要

森林のたより 813号 2021年6月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹コアジサイ190小雨降る薄暗いスギ林で、コアジサイを見つけました。コアジサイ(Hydrangea hirta)は5~6月、渓谷沿いや薄暗い樹林下など少し湿った環境で、淡い青色の花を密集させ甘い香りを漂わせます。コアジサイは「小さなアジサイ」という意味ですが、小枝が赤褐色なためシバアジサイの別名でも呼ばれます。ところでアジサイは漢字で「紫陽花」と記されますが、その和名の由来は「集真藍」という色から来ており、「アヅ(集まる)」、「サアイ(真の藍色)」を指し、青(藍)い花が集まって咲く様子を示しています。しかし漢字で「紫陽花」と表されるのは、中国の詩人、白楽天(白居易:772~846年)の詩の一節にある「紫陽花」が由来とされます。10世紀の平安時代、勤子内親王の求めに応じて源順(みなもとのしたごう)が編纂した『倭名類聚抄』の中で、「紫陽花」はアジサイを指すと解釈して記入したことに始まると言われます。さてコアジサイの花は、他のアジサイ類のような萼片の装飾花は無く、今年伸びた枝先の散房花序に多数の両性花を付けます。花弁は小さく五個、雄しべ十本、めしべの先は三~四本に分かれ、結実能力を持っています。数日で花が散り雄しべが落花すると子房だけが残ります。コアジサイの花は遠目に見るといるという噂が独り歩きしたのですが、いまだに毒成分は分かっていません。しかし2008年に茨城県つくば市で、料理に添えられたアジサイの葉を誤食した8名が嘔吐、吐き気などを発症しました。また同じ2008年に大阪市でも、料理に添えられたアジサイの葉を誤食した1名が嘔吐、顔面紅潮等の症状を発症しました。くれぐれもみなさんは、アジサイの葉を誤食しないでください。▲青紫色が魅力的なコアジサイの花淡い青紫色に見えます。しかしよく観察すると雄しべが青色、花弁と花粉は白っぽく、花茎は濃い青紫色の組み合わせによって、魅力ある色合いを醸し出しています。このため茶道の茶花としても人気があります。秋に子房の中で小さな種子が熟すと、先が割れて穴が空き、周辺にまき散らされるため、親株の下には小さな実生苗が見られます。枝に対生する葉は、全体的に薄く光沢があり、表裏とも葉脈沿いに毛があります。この葉は花が咲く前の若葉を天ぷらや酢みそ和えや、ゴマ和え、油炒めにして食べられますが、酸味と苦味があるので茹でた後に水でさらすのが基本です。最後に、厚生労働省のHPには「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ」が掲載されています。1920年にアメリカでアメリカノリノキを食べた牛や馬が中毒を起こしたことから、アジサイにも青酸配糖体が含まれてMORINOTAYORI 4