ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

鷲見克典わちより自己決定的な調整スタイルは学習に関する適応感を,非自己決定的な調整スタイルは不適応感をもたらすと考えられる13,14,1?).自己決定理論に依拠した学習動機づけとの9)など関係について,日本では,大学生の学習全般?)など23)などをはじめ,語学や体育・運動といった領域等で経験的に検討されてきた.また,学習全般に関する適応感との関連を報告した研究もある1?).縦断データを用いて,心理的適応への効果をとらえる試みもなされている1?).これらの研究結果は自己決定理論に沿った関係を概ね支持している.しかし,多くは横断データを分析した結果であった.学習者の学習成果の向上,適応や健康,質の高い学習生活の理解と実現のために,学習関連適応感のさまざまな側面に対する,自己決定理論に基づく学習動機づけの効果を縦断データによって明確に把握する試みが必要である.3.本研究の目的本研究は,学習動機づけが後の学習関連適応感に及ぼす効果について検討することを目的とした.自己決定性の低い調整スタイルほど,学習関連適応感に否定的な効果を及ぼし,自己決定性がより高い調整スタイルは肯定的な効果を与えることが,検証すべき全般的な仮説であった.対象は大学生とし,大学における学習動機づけに対して,特に強い影響を及ぼすと考えられる科目単位取得や卒業にかかわる主要な試験等のない時期に,縦断調査から得られたデータが分析された.調査の間1?)隔は学習動機づけに関する先行研究にならい,4週間とした.学習関連適応感は,学習に対する満足感,努力感,自己効力感,自己実現感,そして不安感に加えて,自尊感情の?側面を取り上げた.学習に対する満足感は学習に対する満足全般,努力感は主観的な努力,自己効力感は学習による習得の自信,自己実現感は学習を通じた自身の成長と現実化の主観的な評価である1?).学習における不安感は,他の指標とは逆に,不適応感を指し,学習に際する不安や悩みである1?).自尊感情は自分自身を肯定的に評価する気持ちを意味し,自尊心,自己肯定感,自己評価に類似した構成概念である18).自尊感情は学習面に限らない,自己全体に関する感情的側面であるが,近年,特に学校教育に関連して注目を集めていることから18),本研究では自尊感情を学習関連適応感に含める.学習関連適応感の?側面のうち,学習不安感のみは否定的側面である.したがって,本研究の仮説に関して,学習不安感には,他の?つの肯定的側面とは正反対の効果が及ぼされると予想された.学習動機づけの測定とその効果に関する仮説は自己決定理論に依拠した.学習動機づけは大学生における大学での学習に対する動機づけであり,自己決定性による複数の類型とその組み合わせが評価された.学習関連適応感の?側面に及ぼされる,自己決定理論に基づく学習動機づけの諸類型の効果について,大学生から得られた縦断データを用いることで検証した研究はこれまでほとんどない.Ⅱ.方法1.調査対象者と調査方法調査対象者である4年制大学の学生20?名から調査項目への完全な回答を得た.平均年齢は20.40歳(標準偏差1.3?),女性90名,男性11?名,学年は2年生??名,3年生13?名,4年生?名であり,文学系あるいは工学系の学部に所属していた.2回の質問紙調査(Time1とTime 2)が4週間間隔で,2学期制の後期における11月から12月に実施された.いずれも講義後,調査内容の説明をおこない,自主的な参加を承諾した者のみに無記名で実施した.2.調査項目年齢,性別,学年に加えて,Time 1では学習動機づけと学習関連適応感,Time 2では学習関連適応感のみが調査項目であった.1)学習動機づけ自己決定理論に基づく学習動機づけを測定1?)する学習動機づけ尺度を用いた.「大学の学習は自分にとって重要だ」など,大学の学習に関して?件法で評定させる1?項目からな? 177 ?