ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

介護老人福祉施設の施設管理責任者による人材定着のための取り組みいては「適当」が44.7%と最も多く,次いで「やや不足」が29.5%,「不足」が1?.7%となっている?).介護職員においても同様の傾向であり,「適当」が31.5%と最も多く,次いで「やや不足」が28.0%,「不足」が1?.7%と,介護領域における両職種の人材は充足しているとはいえない現状がある2?).これら人材の不足は高齢者に対するケアの質の低下を招くことが推測される.また,平成2?年度の全国の特養の介護職員の離職率は1?.5%で,前年度比較では横ばい傾向を示し,同じ施設サービスである介護老人保健施設の離職率14.4%と比較して特養は1?.0%と若干高い割合を示している2?).介護事業所における介護職員の職務満足・転職・離職に関する先行研究では,仕事全体の満足度が最も低い事業所は特養であり,また,転職意向が最も高い事業所も特養であった19).これら離職率および離転職意向の高さから,特養をはじめ高齢者施設における良質なサービスの安定的な提供に対し,看護・介護職員の確保・定着をはかることはかねてより喫緊の課題であるといえる.国の施策では,人材確保は,事業者の意識改革や自主取り組みを推進することとして重視されている13).人材の定着を促す要因として,制度整備に加えて制度の運用を含めたマネジメントの問題は大きいことが想定される.組織運営や人的マネジメントに対しては,組織管理統括者である施設管理責任者の理念や方針が介護サービスに反映し,職員の職場定着に影響があると示唆されており1?),トップマネージメントとしての権限を行使する施設管理責任者の職員に対する人材定着の取り組みを検討することは,特養における人材定着に必要な職場環境を検討するための基礎的資料となると考える.そこで本研究は,施設管理責任者の人材定着に対する組織運営や職員に対する人的サポートを明らかにすることを目的とし,人材定着に必要なマネジメントの方法について検討した.Ⅱ.研究方法1.対象対象は,本研究への協力に承諾を得られた特養の施設管理責任者?名とした.なお,特養の施設管理責任者とは,特養に従事している施設長,またはサービスの質的向上や,職員育成・施設研修,人事労務管理,施設経営(運営)管理などの施設運営を中心的に担う職員で,いずれも職種は問わないこととした.対象の施設選択にあたっては,本研究の目的から,職員の職場定着に対し積極的な取り組みをしている特養で,比較的離職率の低い施設を考慮にいれた.施設は有意抽出で,選択の指標は,研究者の知り得る情報として職場環境改善や人材教育に熱心であること,および公益社団法人全国老人福祉施設協議会ホームページ,厚生労働省による介護事業所検索「介護サービス情報公開システム」14)で公表されているデータにおいて,経験年数?年以上の介護職員の割合が?0%以上を目安にした.2.調査方法方法は,質問紙法と半構造化面接法(以下,インタビュー)であり,平成2?年9月?11月に実施した.質問紙法は,インタビューを行うに先立ち,直筆により回答を得た.内容は,性別,年齢,現在の施設での役職,取得している資格,現在勤務している施設での経験年数,過去に勤務経験のある福祉施設での合計経験年数の計?項目とした.インタビューの内容は,施設管理責任者の組織運営の取り組み,および職員に対する人的サポートについて,の2項目とした.対象者に質問内容のみを記載した用紙を渡しインタビューを行った.項目に沿って「人材定着のための施設での運営方法の取り組みについてお聞かせください」と「人材定着のための人に対するサポートなどについてお聞かせください」の2つの質問を,対象者の話しの流れを尊重して自由に語れるよう進めた.?名の平均インタビュー時間は48.0±1?.3分であった.なお,インタビューは施? 196 ?