ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

小学生の飲酒防止教育の検討-両親の飲酒に関する実態調査から-期間の禁酒をする必要がある.アルコール依存症の親に関する調査では,その親もアルコールの問題を抱えていることが明らかになっている4).親が飲酒を勧めたり,未成年者に飲酒を許したりすること,子供の健康被害に対する問題を感じない親が一定の割合で存在していた.飲酒をめぐる親子関係は,中学生・高校生を対象にした調査でも,親から飲酒を勧められた経験が有意に多かったのは問題飲酒群であった1?).飲酒する際に,親や親戚といった身近な大人が関わっている傾向が高く,未成年者の仲間同士で飲酒する機会は減少傾向にあり,さらに,親の飲酒頻度が高いほど,親は子どもに飲酒を勧め,子どもは親の影響を受けやすいことも報告されている1?).これまでの研究では,子供の体験から親のアルコール依存症と判断,あるいはアルコール依存症の親をもつ子供の状況を調査して,親からの影響があると報告されている14).今回の結果から,子供の飲酒は,親から子供,親はまたその親から影響を受けていることが伺える.子どもを持つ親の,片方だけではなく,両親に教育をすることが必要であると考える.Ⅴ.結論「小学生の飲酒防止教育」を検討するために,小学生の子供を持つ両親にアンケート調査を実施した.その結果,親の飲酒状況の比較では,要注意群とアルコール依存症の疑い群では父親が2倍以上も高かった.飲酒に関する知識においては,【アルコールの長期にわたる多量飲酒の害】に関する知識が低かった.子供の飲酒は,親から子供,親はまたその親から影響を受けていることが伺える.小学生の飲酒防止教育は,小学生の保護者である両親,特に父親にも実施することが重要視された.飲酒の害を自分のことのように実感ができる飲酒防止教育の内容を工夫し,小学生だけの教育ではなく,両親を巻き込んだ教育を考える.そのためには,学校教育に導入し,家庭で自由な時間に学習できるWebによるe-learningの教育方法が望ましいと考える.Ⅵ.謝辞本研究は文部科学省科学研究費補助金(基盤研究C:親子で学ぶ「小学生用飲酒防止教育プログラム」の検討課題番号:2?4?3??3)の助成を受けて実施した.利益相反に関する開示事項はありません.文1)Black C,斉藤学(1989)「私は親のようにならない」,誠信書房,東京.2)江藤和子,田中健次(2011)ICTを活用した薬物乱用防止教育プログラム?親子で学ぶ飲酒防止教育の試み?,教育システム情報学会誌,28(1),71-79.3)堀毛裕子(1991)日本版Health Locus ofControl尺度の作成,健康心理学研究,4(1),1-7.4)岩倉信之,世良守行,米沢宏,重黒木一,新貝憲利(2006)アルコール依存症とその親世代のアルコール問題との関連についての調査研究,アディクションと家族,23(1),55-63.5)公立小・中学生及び高校生の喫煙・飲酒状況調査実施(2007)青森県健康福祉部保健衛生課,gan/info.pref.aomori.jp/public/attachments/.../kitsuentyosa.pdf6)厚生労働省(2000)21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)について報告書,厚生労働省.7)文部科学省(2008)「小学校学習指導要領解説?体育編?」,東洋館出版社,東京.8)文部科学省(2008)「中学校学習指導要領解説,保健体育編」,東山書房,京都.9)文部科学省(2011)「喫煙,飲酒,薬物乱用防止に関する指導参考資料,中学生編」,日本学校保健会,東京.10)NORWOOD,R(1988)「愛しすぎる女たち」(落合恵子訳),読売新聞社,東京.11)織田律子(1995)アルコール依存症の子どもたち,教育学会誌,22,5-32.献? 218 ?