ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

樋田小百合,小木曽加奈子,渡邊美幸らしさを保ちながら過ごすことを支援することに繋がると報告している.このように,患者のもてる力を最大限に引き出すためには,「できるところを励ましどんどん増やしていくと良い」など〈励ましながらもてる力の活用を促す〉ことや「回復期の病棟であれば患者の行動を待つ姿勢がある」といった〈患者に寄り添う姿勢〉で接することなど,自分でやろう,自分でできると患者自身に認識してもらうことが必要である.さらに,患者自身のもてる力を看護師が把握しながら〈もてる力を伸ばすことを意識する〉ことで前述のようなケアを実践し,患者にとって介助を受けることなく日常生活を送ることができれば,これまでの自分らしさを保つことができ患者にとってよりよい生活につながる14)と考える.したがって,【在宅復帰に向けての関わり】や【入院生活の中で患者のもてる力を意識した関わり】とは,入院や転棟したその時から,生活者として入院前の,その人らしい生活スタイルを意識した関わりをしていくことが大切である.徳原ら15)は,治療が優先される急性期病院であっても,その人らしい生活が送れるように関わっていくことが看護師の役割であると述べているように,もてる力を活用するということは,患者の日常性を重視しながらその人らしさを追求していくケアであると考える.また,病棟看護師は退院に向けての支援を実践するには,【多職種との連携を図りながら退院を見据えた患者のもてる力の把握】を十分に行う必要があると認識していた.地域包括ケア病棟において,退院に向けた機能訓練を行う際ADLを評価し本格的なリハビリは,理学療法士・作業療法士らのリハビリ職が中心となり実施されている.看護師は生活リハビリとして日常生活のあらゆる場面の観察やサポートをし,多職種と協働しながらリハビリに向けたケアを展開していく.つまり,「リハビリ職とのカンファレンスでADLの情報を初めて知ることもある」や「合同カンファレンスも情報のくい違いがあり定期的に開くようになった」のように【多職種との連携を図りながら退院を見据えた患者のもてる力の把握】をすることが不可欠であると考える.荒木ら3)は,認知症看護認定看護師は,患者に関わる全ての職種がチームの一員であり,ケアの方向性を定めてチームで統一した関わりをもつことで,認知症高齢者の心身の状態が安定すると本来の治療が進めやすくなると考え,患者の状態に応じて多職種を巻き込むことを行っていたと報告している.このように,地域包括ケア病棟において,認知症高齢患者のもてる力を多職種チームで情報共有しながら把握し,退院に向けてのケアプランを立案し目標設定した介入を積極的に進めることが重要であると考える.2.病棟看護師における認知症高齢患者のもてる力の活用の課題病棟看護師は,認知症高齢患者のもてる力の活用に対して,【患者のもてる力の活用ができない状況】,【認知症によるもてる力の活用の困難さ】の2つの課題を挙げていた.【患者のもてる力の活用ができない状況】として,「病棟でのケアが現実に即さずもてる力を活用できていないこともある」や「家族によって退院のゴールの意見の違いがある」など〈もてる力の活用が難しい〉実状があった.また,「最初に転倒があると転倒しないよう介助してしまう」や「一度センサーマットをするともてる力を再度アセスメントすることが欠けてしまう」など〈もてる力の活用より安全を優先させる〉場合,さらに,「急性期病棟では病気を治すことが優先され全部介助してしまう」や「点滴や検査などがあるともてる力の活用に意識がいかない」など,〈もてる力の活用より治療を優先させる〉場合は,活用が困難であると認識していた.13)武田は,認知症の肺炎や骨折などの身体救急疾患への対応が困難と感じる理由で最も多かったのは,『転倒・転落の危険がある』であり,3番目に多かったのは,『検査・処置への協力が得られにくい』と報告している.このように,退院支援する病棟看護師において,患者のもてる力を十分に活用したい思い? 257 ?