ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

地域包括ケア病棟における認知症高齢患者のもてる力の活用の現状と課題もあるが,安全や治療を第一優先しなければならない葛藤を抱いていた.医療安全を重視するあまり,離床センサーをなかなか外せない現状であるため,抑制と同様に定期的に多職種と情報共有しながら,センサーを外していく基準やタイミングを検討していくことも必要であろう.【認知症によるもてる力の活用の困難さ】では,「家族の方が患者の認知症を理解できていない」のように〈家族による患者の認知症への理解不足〉があること,「高齢者は入院により環境が変わるともてる力の状況が変化する」や「認知症患者は昼と夜のもてる力の状態が違う」など〈環境の変化による影響〉があることが,患者のもてる力を活用する阻害要因であった.前者のように,家族の患者の認知症への理解不足から,家族間の意見の相違も出てくることが予測される.患者のもてる力を最大限引き出し活用するには,家族による認知症高齢患者への正しい理解と協力が必要であると考える.したがって,急性期病棟から転棟当初より,家族との情報交換を密にとり,家族への正しい患者理解のサポートや共通したゴール設定でケアしていくことが重要である.後者では,田口ら12)は,自分の置かれている状況を客観的に把握することが難しい認知症高齢患者にとって,知らない環境,初めての人に接する入院生活は,不安や混乱を生じさせる原因となるというように,患者のもてる力の〈環境の変化による影響〉は避けられない.入院や転棟という環境の変化を強いられる患者にとって先ずは,安心感が得られるよう,家族などの馴染みの人による人的環境を調整しながら,患者の置かれた状況が理解できるよう,馴染みの愛用品を整えるなど普段の暮らしを維持できるような環境整備が必要である.1.病棟看護師における認知症高齢患者のもてる力の活用の現状は,【在宅復帰に向けての関わり】,【入院生活の中で患者のもてる力を意識した関わり】,【多職種との連携を図りながら退院を見据えた患者のもてる力の把握】のカテゴリーが抽出された.2.病棟看護師における認知症高齢患者のもてる力の活用の課題は,【患者のもてる力の活用ができない状況】,【認知症によるもてる力の活用の困難さ】のカテゴリーが抽出された.研究の限界と今後の課題本研究は,限られた病棟看護師へのインタビューであり,一般化することはできない.また,看護師個々の,患者のもてる力の捉え方も相違がある可能性もあり得る.今後は,どのような視点で,患者のもてる力を捉えたか,具体的にどのように活用したのかなど.フィールド調査も活用し,詳細に調査していく必要があると考える.謝辞:本調査にご協力いただきました看護師の皆様に心より感謝致します.なお,本研究は文部科学省研究費基盤(C)課題番号16K12193の助成を受け実施した研究の一部である.利益相反:本研究による利益相反は存在しない.著者資格:STは,研究の着想から原稿作成の全プロセスに貢献した.KOとMWは,分析,解釈,考察について貢献した.すべての著者は最終原稿を読み,了承した.Ⅴ.結論病棟看護師の認知症高齢患者のもてる力の活用の現状と課題について調査した結果,次のような結論を得た.? 258 ?