ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

小木曽加奈子,伊藤康児う生活の場ならではの特性もある.2015年度の調査では,老健の入所者は,認知症高齢者の日常生活自立度(以下,認知自立度)のランクⅡaからMは94.0%に該当しており14),DASC(Dementia Assessment Sheet for theCommunity-based Integrated Care System,以下,ダスク)の平均値は認知症の可能性ありと判定されるカットオフ値31点を大きく超える73.04点であり,31点以上は99.8%と認知機能に問題が認められる状況が示されている.このように,認知症の臨床診断がなくとも認知自立度やダスクにおいても,認知症の症状に起因するBPSD(behavioral and psychologicalsymptoms of dementia)により日常生活全般に対して困難がある状況である.先行研究においても認知症高齢者のBPSDは介護負担を招くことも明らかになっており2,3,7,9,29),認知症高齢者のBPSDにどのように向き合うのかは重要であり,それが看護職の職務満足にも影響を与えると考える.27)認知症ケア専門士を対象とした研究では,認知症の行動・心理症状(BPSD)に対応することは,仕事満足度を高める要因として有意に関係していたことが明らかになっている.しかしながら,認知症ケア専門士の主な職種は介護福祉士であるため,看護職においての傾向を明らかにすることが求められる.さらに,老健などの高齢者施設は人材不足も深刻な課題であるため,職務の継続に着目し,職務満足のみならず,転職意向や離職意向の傾向も把握することが必要になる.そこで,本研究では,老健の看護職の職務の継続に着目し,職務満足度,転職意向,離職意向とBPSDに向き合うことができる認知症ケアとの関係を明らかにすることを目的とする.1.対象・調査期間Ⅱ.研究方法2014年4月1日現在,公益社団法人全国老人保健施設協会に属し設立3年以上が経過している100床以上の東海4県の老健255施設を対象とした.各施設の常勤の看護職5名を施設の看護介護部長等に人選を依頼した.なお,対象者はすべて常勤勤務の者とした.調査期間は2015年5 ? 7月とし,質問紙調査を実施した.2.調査内容基本属性は,年齢,性別,資格(複数回答),年収,認知症ケアの経験年数とした.職務の継続としては,職務満足度,転職意向,離職意向とした.Herzbergによる欲求1)理論に基づいて作成された職務満足度尺度を,許可を得て老健の看護職用に修正を行った信頼性と妥当性の検証がされている介護老人保健施設の看護職版職務満足度評価尺度(Nursing version duty satisfaction ratingScale of Long-term care health facility,以下,N-DS-HF 25))の6領域27質問項目は,『非常にそう思う:5点』?『全然そう思わない:1点』の5段階で評価した.仕事全体の満足度は,“全体として,私は自分の仕事に満足していると思う”,転職意向及び離職意向については,“高齢者ケア以外の仕事がしたい(以下,転職意向:例;一般事務など)”と“他の高齢者施設へ移りたい(以下,離職意向:例;デイケアなど)”とした.各質問項目は,『非常にそう思う:5点』?『全然そう思わない:1点』の5段階で評価した.介護人材の確保が重要課題となっているように,老健を退職し,高齢者施設以外の仕事を選択するのか否かは,本研究にとって重要であるため,上記のように位置づけた.認知症ケアとしては「易怒・興奮」「拒薬・拒食・拒絶」「行動的攻撃(暴力)」「不潔行為」の4領域20質問項目から成るBPSDサポート尺度(Support standards for the behavioraland psychological symptoms of dementia,以下SS?BPSD)24)を用い,『よい反応が得られる:4点』?『よい反応が得られない:1点』の4段階で評価した.3.分析方法統計解析は,SPSS 21.0 for Windowsと? 307 ?