ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

カンフー体操が中高齢者の体力に及ぼす影響-ラケットスポーツと比較して-眼片足立ち,柔軟性を必要とする種目として長座体前屈の測定を行った.A,B,C三人の指導による三群の対象について10ヶ月のプログラム実施後に比較した結果,閉眼片足立ち(男性,A:11.5±6.4秒,B:11.4±6.5秒,C:11.4±6.2秒;女性,A:12.0±2.2秒,B:11.8±2.4秒,C:12.3±2.0秒),長座体前屈(男性,A:38.1±5.5cm,B:36.2±5.7cm,C:37.5±5.3cm;女性,A:41.8±4.4cm,B:40.1±4.2cm,C:41.1±4.2cm)について,有意な差は認められなかった.森山ら17)は各群介入前後については統計的に分析をしていないが,女性の閉眼片足立ちではプログラム実施から10ヶ月後にA,B,C指導のプログラム全てにおいて100%以上(介入前はA:6.0±2.6秒,B:5.7±2.8秒,C:5.9±2.4秒;介入後はA:12.0±2.2秒,B:11.8±2.4秒,C:12.3±2.0秒)増加した.以上のように森山ら17)の研究からは,ラケットスポーツ運動は閉眼片足立ちに関してはよい影響があると考えられる.しかし,本研究のラケットスポーツ群では閉眼片足立ちの測定項目に関しては,ラケットスポーツ群の値が介入前と比べ,介入後に減少の傾向がみられ,森山ら17)の研究と異なる結果になった.異なった理由の1つとして考えられるのは,閉眼片足立ちの測定値の標準偏差が大きい(群内のバラツキが大きい)ことがこのような結果につながった可能性がある.本研究のカンフー体操群だけで見ると有意な効果が認められた.閉眼片足立ち(左足)が介入後に54.5%(介入前:10.1±9.1秒,介入後:15.6±9.3図1カンフー体操における片足でバランスを保つ動作の例秒)増加し,閉眼片足立ち(右足)が介入後に15.6%(介入前:10.9±9.7秒,介入後:12.6±7.7秒)増加した.カンフー体操は片足で立ち,更に手をあげるなど,普段あまりとらない姿勢になるため(図1),下肢のバランス能力の向上に効果があったと考えられる.また,今回の研究では,カンフー体操を希望した参加者は,全員カンフー体操は初めてであったが,太極拳の経験がある者は16名中9名であった.ラケットスポーツを希望した参加者の内,ラケットスポーツ経験者は11名中5名であった.多くの先行研究が示すように太極拳にはバランス能力を向上させる効果8)がある.また,木村によれば,日常生活で様々なスポーツをしている健康成人を対象に閉眼,開眼の片足立ちテストを行った結果,太極拳や社交ダンスを実践している人の閉眼片足立ち時間が長いことを報告している.カンフー体操と同じ中国武術の1つである太極拳について調べた上岡ら7),高橋ら24)によれば,様々な形式の太極拳のバランスに関するトレーニング効果を比較し,どの様な介入方法,評価の条件において有意な改善がみられるかを検証したところ,「計40回以上の練習」を行い,「バランスを保つのが難しい条件」で評価した場合に,有意な差がみられる傾向があったと報告している.なお,本研究はいくつかの限界と課題を有している.1点目に本研究の参加者は希望する教室を自由に選択できたため無作為にグループ化されたものではなかった.参加者の運動の好みや身体的特性が結果に関与する可能性は否定できない.今後は,ランダム化比較試験を適用するなど条件の統制が必要である.2点目に運動教室以外については普段の日常生活や普段の運動に関しては記録調査を行っていないため,介入内容以外の影響が結果(効果)に含まれている可能性がある.3点目に本研究では非運動群との比較を行っていないため,カンフー体操の純粋な効果は明らかにできておらず,カンフー体操がラケットスポーツよりも有益であるかは明確な結論を得られなかった.4点目に本研究のカンフー? 330 ?