ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

加速局面と最大スピード局面における幼児の疾走能力の特性Ⅰ.緒言疾走能力は,様々な運動の達成水準を決める重要な基礎的能力の一つである.疾走能力の発達をみると,その動作様式は2歳頃に身につきはじめ,6歳から7歳頃にかけて基本的な形態が定着する3).また,その速度は加齢とともに12歳頃までほぼ直線的に増大し,男子は17歳頃,女子は13?14歳にピークに達する3).こうした疾走能力の発達に関する研究では,疾走速度がピッチ(歩/秒)とストライド(m/歩)の積で決定されることから,疾走速度,ピッチ,ストライドの変容が横断的・縦断的に検討されてきた6).そして,疾走能力の発達がピッチではなく身長の発育に伴うストライドの増大によってもたらされることがわかってきている1,2,3).こうした疾走能力の発達過程をみると,幼児期は,基本的な疾走動作が身につき始めて速度が急速に向上することから,生涯にわたる疾走能力の水準が決まる極めて重要な時期であることがわかる3).しかし,幼少期の疾走能力を検討した先行研究では,児童期のピッチやストライドの変容5,7,9)を検討した報告が多く,幼児期の変容を検討した報告は少ない.また,幾つかの先行研究では,ピッチは児童期に成人と同じ水準に達すること7),疾走動作は6歳から7歳頃に成人とほぼ同様になること6)など,幼少期と成人を比較して疾走能力の発達を捉えようとした報告が散見されるが,年齢の低い幼児期と成人の疾走能力を比較・検討した報告は極めて少ない.他方,短距離走は,加速局面,最大スピード局面,全速維持局面の3つの局面に分けられ,局面によって速度や動作様式が異なる4).したがって,疾走能力の発達を捉えるためには,局面を分けて検討することが重要である8).これまでの研究において,短距離走の競技力を決定する主因は,最大スピード局面の疾走速度であることがわかっている.そのため,先行研究では最大スピード局面におけるピッチ,ストライド,疾走動作に着目した研究が多く行われてきた.しかし,幼児期は,基本的な疾走動作が定着する前段階にあるため,加速局面から最大スピード局面にかけて疾走速度が遅くなるなど,幼児期独特の疾走様式となる可能性がある.そこで本研究では,幼児を対象に25m走を行い,加速局面と最大スピード局面のそれぞれにおいて疾走速度と身長,ピッチおよびストライドとの関係を検討した.また幼児の特性を検討するために,成人を対象に50m走を行って同様の測定を行い,幼児との比較を行った.Ⅱ.方法1.対象者対象者はいずれも男子であり,幼児43名(年中児21名,年齢4.8±0.2歳;年長児22名,年齢5.8±0.3歳)と習慣的にスポーツを実践している成人20名(年齢21.2±1.2歳)であった.対象者の身長と体重は,年中児は105.0±3.9cmと17.3±1.7kg,年長児は113.5±3.6cmと21.9±4.4kg,成人は169.5±6.1cmと62.3±6.1kgであった.2.実験手順50m走や100m走などの短距離走は,最大疾走スピードの大きさを基準として,加速局面,最大スピード局面,全速維持局面の3つの局面に分けられる8).しかし,本研究の対象者が幼児であることから走距離を25mとし,0 ?15m区間を加速局面,15?25m区間を最大スピード局面と定義して2つの局面に分けた.また成人の走距離を50m走とし,幼児の局面分けの比率に合わせて,0 ?30m区間を加速局面,30?50m区間を最大スピード局面と定義した7).身長は伸縮式デジタルハンドル身長計,体重はデジタル体重計をそれぞれに用いて測定を行った.対象者は,準備運動を行い,ウォーミングアップとして25m走または50m走を1回行った後,同様の距離の測定を2回行った.また幼児については,ゴール直前に減速することを防ぐために,実際のゴール地点から? 334 ?