ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

佐藤文音,神藤隆志,藤井啓介,北濃成樹,阿部巧,慎少帥,薛載勲,城寳佳也,藤井悠也,金美珍,大藏倫博も細かな相違がみられた.こうした介入内容の違いは,本研究の結果,本研究の一般化可能性の範囲に影響を及ぼす可能性があり,これらを考慮した検討が求められる.また,高齢者におけるSSEの実践は,認知機能にも好影響を与えることが報告されているため14),今後は下肢機能だけでなく認知機能にも焦点を当てて高齢ボランティア,専門家の運動指導の効果を比較する必要がある.また,各自治体では多様な運動サークル,運動教室が開催されているため,今後はSSE以外の活動にも焦点をあてて運動サークルと教室の効果の違いを検討することが求められる.最後に,本研究では,サークル群と教室群の出席率やベースラインにおける特徴に有意差が認められ,サークル群は教室群に比して出席率が有意に低く,静的バランス能力や下肢筋力は有意に良好であった.SSEサークルとSSE教室は運営主体が異なる他,開催期間にも違いがあり,前者は継続的に開催されるが,後者には3ヵ月という開催期限がある.こうした特性の違いは,対象者の心理や行動に影響を与え,対象者にとってSSEサークルは「参加できる時に参加する活動」,SSE教室は「できる限り休まずに参加する活動」になっていたと推察される.本研究における群間の出席率の違いは,結果に影響を与えた可能性があるため,今後はこの点を考慮した検討が求めら12)れる.高齢社会白書では,高齢者が参加したい社会参加活動は,「趣味のサークル・団体」が31.5%と最も多く,「健康・スポーツのサークル・団体」は29.7%と2番目に多いと報告されている.運動サークルへの関心は今後益々高まると予想され,本研究の対象者と異なり,身体機能水準の低い者が参加する機会も増えていくと考えられる.今後は幅広い身体機能水準の者を対象に運動サークルの効果を検討していく必要がある.Ⅴ.結論高齢ボランティアによるSSE指導が高齢者の下肢機能に与える影響は,専門家による指導の影響と差がないことが示唆された.しかし,本研究では,ボランティアあるいは専門家による運動指導の効果として,下肢機能の向上効果は認められなかった.SSEを主運動とする運動サークルおよび教室では,運動強度を漸進的に上げるなど効果を増大させるための工夫が求められる.また,今後も運動サークルの効果を他の通所型サービスの効果と比較し,介護予防施策における運動サークルの役割を検討する必要がある.加えて,ボランティアの指導の質,効果を保障できる運動を検証し,現場へ適用することで効果的な運動サークルの普及に取り組むことが重要といえる.謝辞本研究を実施するにあたり多大なご協力をいただいた,笠間市包括支援センターの職員の皆様,笠間市スクエアステップ・サークルの皆様に厚く御礼を申し上げます.利益相反本研究において,開示すべき利益相反はない.文献1)新井武志,大渕修一,小島基永,松本郁子,稲葉康子(2006)地域在住高齢者の身体機能と高齢者筋力向上トレーニングによる身体機能改善効果との関係,日本老年医学会雑誌,43(6),781-788.2)Gillett PA, White AT and Caserta MS (1996)Effect of Exercise and/or Fitness Educationon Fitness in Older, Sedentary, Obese Women,J Aging Phys Act, 4(1), 42-55.3)平井寛,近藤克則,尾島俊之,村田千代栄(2009)地域在住高齢者の要介護認定のリスク要因の検討AGESプロジェクト3年間の追跡研究,日本公衆衛生雑誌,56(8),501-512.? 141 ?