ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

田路秀樹,梶原綾,江口善章また,パネルデータにおいて男女間の回帰直線の傾きの差の検定を行ったところ,握力にのみ1%水準で有意な差が認められた.時系列データでは,握力,開眼片足立ち(ともに1%水準),SSTw(p<0.05)に有意な差が認められた.さらに,パネルデータと時系列データ間の回帰係数の差の検定では,男性の上体起こし間,開眼片足立ち間,10m障害物歩行時間間及びSSTw間(いずれも1%水準)に有意な差が認められた.しかし,女性においてはいずれの項目間にも有意な差は認められなかった.上記の結果から,種々バイアスを受ける項目は男子が上体起こし,開眼片足立ち,10m障害物歩行時間,SSTwの4項目,女性が上体起こし,長座体前屈の2項目であった(表3).Ⅳ.考察本研究は,パネルデータ分析と時系列データ分析の比較を通して,加齢に伴う男女中高齢者の体格・体力の特性と性差について検討したものである.パネルデータ分析は時系列,クロスセクションのデータを合体してすべての変数が共通の母集団から発生していると考え,データを一括して取り扱う分析である.よって,一回限りのクロスセクションデータでは個別主体が特定の時間効果を受けているために推定にバイアスがかかる恐れがあるが,個別主体について時系列方向で何回分かのデータを集めて平均をとれば,そのような特定時点の効果を緩和できるとされている.また,時系列データだけの分析では,個別主体ごとの時系列方向のデータのみを扱うもので,データが時系列内で大きく変動する可能性がある18).従って,パネルデータ分析では種々バイアスを除去した結果として年齢と体格,体力の関係を考察した.なお,分析にあたり対象者の代表性を検討31)するため,文部科学省と比較検討した結果,10m障害物歩行時間を除くと,女性については体重に2年代のみに有意差がみられ,男性は身長,体重,上体起こしが各1年代,開眼片足立ちが1年代に有意差がみられた.このように有意差は各年代で1?2項目みられたが基本的に特出した対象者ではないと判断し分析を行った.しかし,10m障害物歩行時間については,検定したすべての年代に有意差(本対象者>文部科学省)がみられたことから,10m障害物歩行時間については本対象者が優れていることを考慮して分析することとした.図1?1及び図1?2に示した体格について,身長では表2より男性はバイアスを受けるが女性は受けにくいといえる.バイアスを除去し26,42)た場合,これまでの先行研究と同様明らかに加齢とともに身長は低下した.性差については,南ら26) 42)が横断的な評価から,徳田が15年間の時系列データからいずれも加齢に伴う身長の変化は男性より女性の方が大きいと報告している.しかし,本研究のパネルデータ分析において男女間の回帰直線の傾きに有意な差はみられず,加齢に伴う男女の身長の低下は同等であった.体重は男女ともバイアスを受けるという結果を示した.バイアスを除去すると,体重もまた身長と同様に加齢に伴い明らかに低下した.しかし,男女間の回帰直線の傾きに有意差はみられず,体重の低下もまた男女同等であった.このように,身長,体重ともにバイアスを受け加齢に伴い明らかな低下を示したが,BMIについて男性はバイアスの影響を受けないとともに加齢による低下を示さなかった.女性はバイアスが影響し,加齢に伴う低下を示した.水野ら29)は男女の身長と女性の体重に有意な低下が認められたが,BMIは男女とも有意な低下を示さなかったと報告している.このように,身長,体重の加齢による変化とBMIの変化は必ずしも一致しない.この結果は,BMIを身長と体重の両要因から算出するためバイアスが複雑に関与し,特に男性は身長,体重ともバイアスの影響を受けることから一致しないのかもしれない.次に,体重と関係する体脂肪率,除脂肪体重を検討した.体脂肪率は男女ともバイアスを受ける結果を示し,加齢とともに男女とも同等に増加した.除脂肪体重につい? 153 ?