ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

パネルデータ分析による中高齢者の体格・体力の特性と性差-時系列データ分析との比較から-ては,バイアスを女性は受けるが男性は受けにくいと考えられる.しかし,除脂肪体重は加齢とともに男女とも同等に低下した.また,2,42)体重の減少は加齢に伴う骨密度の減少,6,42)除脂肪体重の減少,除脂肪体重及び体脂3,34)肪量の減少によることが報告されている.本研究では除脂肪体重は男女とも有意な低下を示したが,体脂肪率は有意な増加を示した.この結果から,本対象者は体脂肪量の増加よりも除脂肪体重の減少が上回り体重が減少したと予測される.OSIについては,男性はバイアスの影響を受けたが女性は受けなかった.OSIにおける男女差について,女性は閉経後急激な骨密度の低下をもたらす1)とされており,その後はバイアスが関与しないのかもしれない.しかし,男女とも年齢との間に相関はなく,60歳以降は加齢による変化がみられなかった.図2?1及び図2?2に示した体力について,筋力としての握力は,男女ともバイアスを受けることなく加齢とともに低下するという結果を示した.これまでの握力と加齢との関係を7,10,26,29,34)11,33,42)検討した横断的研究,縦断的研究においても,男女とも年齢との間に有意な負の相関がみられたと数多く報告されている.これらの結果を考え合わせると,握力の加齢に伴う低下はバイアスとは無関係に低下すると推察される.一方,両分析の男女間における回帰直線の傾きについてはともに有意な性差(男性>女性)が認められた.性差に関しては縦断的な研究において灘本ら33)は女性の低下が著しいとし,70歳代を過ぎると運動習慣の有無が握力に影響し,運動習慣の無い70歳代以降の女性の割合が高くなったことが要因42)ではないかとしている.しかし,徳田によると男性の低下が著しいとする異なる報告もなされている.また,横断的な研究から65歳代の平均値を基準として75?80歳の平均値から低下率を求めると,男性の低下率の方が高10,13,26,34)くなる報告が多くなされている.筋力の低下をもたらす要因として速筋線維の選択24)的委縮さらにライフスタイル9)の影響等が報告されており,男性の握力の著しい低下は男性の速筋線維の選択的委縮が女性よりも著しいことが一つの要因ではないかと推察される.従って,男性の著しい握力低下は中高齢者の体力維持を考えるうえで重要な課題といえる.筋持久力の上体起こしは,男女ともバイアスの影響を受けるとともに,バイアスを除去すると男性は加齢とともに緩やかな低下を示すが,女性は60歳を超えると加齢による低下はみられなかった.上体起こしの性差について,横断的研究であるが男性の方が加齢10)の影響を受けやすいとする報告がなされている.また,本研究では女性の値の変動が大きく,この変動が影響しているのではないかと考えられるが性差について現時点では明らかにすることはできない.平衡性の開眼片足立ちは,バイアスを男性は受けるが女性は受けにくいといえるが,男女とも加齢とともに同等に低下した.開眼片足立ちに関して,横断的な分析により男女とも年齢との間に有意10,29,34)な負の相関がみられたとする報告,縦断的研究では男女とも加齢とともに低下し39,42),低下幅について性差はみられなかったことも42)報告されている.本研究結果においてもバイアスを除去した場合,性差はなく加齢とともに同等に低下し,先行研究を支持するものであった.柔軟性の長座体前屈について,これまでの横断的研究では男女とも年齢と有意10)な負の相関がみられたとする報告,女性にのみ年齢と有意な負の相関がみられたとする29,34)報告,加齢による変化がみられなかった19,36)とする報告があり一定の結果が得られてない.また,柔軟性は対象者のライフスタイ19)ルを中心とする検討の必要性も報告されている.本研究結果から,女性はバイアスの影響を受けるが男性は受けにくいといえる.また,基本的に長座体前屈は加齢に伴い低下するが性差はみられないと考えられる.歩行能力として短時間運動の10m障害物歩行時間は,男性はバイアスを受け女性は受けにくいが,男女とも加齢とともに低下した.短時間の歩行能力について横断的研究では,性差が5,29)みられたとする報告,縦断的研究では,性38)差はみられなかったとする報告がなされて? 154 ?