ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

訪問看護ステーション利用在宅高齢者における足病変とセルフケア行動の実態-歩行能力との関連性の分析-近年増え続ける足病変の発生要因として,44)新城は糖尿病神経障害,足の変形,下肢末梢動脈疾患,性格,高齢独居者,認知症,運動器障害,慢性腎不全を指摘している.高齢化に伴い,高血圧,糖尿病,脂質異常など複数の疾患を併せ持つ患者は増加し,足病変の発生機序や症状も複雑化している.厚生労働省(2014)の調査によると,訪問看護ステーション利用の在宅高齢者は,悪性新生物,糖尿病,認知症,腎尿路生殖系疾患,高血圧,心疾患,脳血管疾患といった疾患を抱えている人が多い26).その一方で,足には皮膚乾燥,胼胝,鶏眼,角質肥厚,浮腫,爪の変形,爪の肥厚などの何らかのトラブルを持つ人がほとんどである10,38).地域高齢者を対象とした海外の先行研究では,65歳以上の40~87%は何らかの足の問題を抱えていると指摘されている5,6,29,31).足把持力,足部柔軟性,足底圧,足関節可動域,足部変形やそれぞれの関係性の分析など,足部の問題に関する様々な研究が国内外で多く報告されている46,55,56).足爪に関しては,山下ら54)は足爪異常は下肢筋力低下や姿勢制御低下に影響があると述べ,野本ら41)は,足の変形が可動域制限,生命の質にも影響を及ぼすことを指摘している.下肢筋力の低下や,バランス機能,転倒恐怖感は,転倒リスクとして既に報告されているが,足趾力や足関節などの角度から見た足の状態による転倒リスクも報告されている22,23,34,35,39,43,52,55,57).著者は,訪問看護ステーションが行う在宅リハビリテーションに関する研究動向を調査9)した結果,訪問看護師は在宅におけるリハビリテーションに多様な役割を果たしていることを明らかにした.日々の臨床において,足の機能のみならず,足の状態を良好に保つことは在宅リハビリテーションに必要であることを認識している.国内においては,在宅での転倒が多いにも関わらず,訪問看護ステーション利用中の在宅高齢者の足病変について調査した原著報告は少ない.内田ら49)の報告のみである.通所介護施設に通う在宅高齢者を対象にした足の調査は姫野ら13,14)がその多くを報告している.訪問看護を利用している対象者は高齢で介護認定を受けており,足に何らかのトラブルを抱える要因となる疾患や身体状況を持ち合わせている.2足歩行をとる人間において足のアーチや足趾は,地表に伝達するための重要な部分である8,19,57).本研究では,歩行をしなければ,地表に着かない機会が多くなることにより,足病変が多く見られると考え,歩行できるか,できないかに分類をして分析をした.足病変の実態を主観的,客観的に調査し,セルフケアの実態を把握することは,在宅高齢者の足病変予防を考える上で意義があると考えた.Ⅱ.研究目的本研究では,訪問看護ステーション利用の在宅高齢者の足病変を歩行できる群と歩行できない群別に客観的,主観的評価をして検討し,その実態を把握することが目的である.また,歩行できる群のセルフケア行動の実態についても把握する.Ⅲ.用語の定義在宅高齢者:在宅で訪問看護を利用する65歳以上の高齢者と定義した.在宅とは利用者が療養する場所で,自宅などの居宅施設以外と,有料老人ホーム,ケアハウスなどの居宅系施設を含む.歩行できる,歩行できない:歩行できるは床に足を着いて,自立歩行や歩行器や人の手を使ってでも少しでも歩行ができる.歩行できないは,ベッドサイドに座位がとれたり立位はとれても,介助で歩行できない,心理的に歩行を拒否し,全く歩行をしていない人も含める.足病変:足病変は皮膚,爪,足や足趾の変形,神経,循環などの状態において足に出現する病変と定義した21).? 168 ?