ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

ページ
46/68

このページは 教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号 の電子ブックに掲載されている46ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

藤井かし子と考えられる痛みの3項目(膝が痛い,足が痛い,足の底が痛い)についても有意差は認められなかった.また,足が痛いについては有意差はないものの歩行できない群の方が高い傾向があった(歩行できる:2.74±2.37,歩行できない:3.42±3.42).足の底が痛いについては有意差はないものの逆に歩行できる群の方が高い傾向があった(歩行できる:1.42±1.60,歩行できない:1.11±0.33).単に足が痛い場合と足の底が痛い場合とで,歩行の可否に関して傾向の向きが逆であるのは興味深い.足の底が痛い場合は,歩行による神経の圧迫の関与が大きく,単に足が痛い場合は神経の圧迫以外のメカニズムの関与の可能性が考えられる.4.客観的評価と主観的評価の差異客観的評価で歩行できる群も歩行できない群も足に何らかのトラブルがあるにもかかわらず,主観的評価では質問項目に対して平均値は2台であり,足の問題について感じていないと回答している方に傾いていた.渡邊ら53)の調査では,足にトラブルを持つ者は足白癬および爪白癬の場合,その多くは利用者自身が気が付いていない,もしくは気が付いていても報告していないという報告をしている.Menzら31)が先行研究をもとに,多くの高齢者は足に問題があるにもかかわらず報告をしないが,それは足の痛みを医療的事情ではなく,高齢化による必然的な結果であると考えているためであると指摘している.Abdullah 1)は爪の病変は,高齢者に多くみられるにもかかわらず見過ごされていると指摘している.足にトラブルがあると認識していても痛みなどの症状が出なければ,気にならなかったり,症状が出現しても相談する場所を知らず放置していることがある現状が考えられる.5.セルフケアに関する現状セルフケアの調査では,日常的に行うセルフケア行動に結びついている人は少なかった.実際,介護保険や医療保険を利用している在宅高齢者は,白内障等の視力障害や視力の低下,手の巧緻性の低下,屈伸して手を足まで延ばせないなどの体自体の機能の低下により,足趾間を観察したり,保湿をしたり,爪を切ることが困難である7,24).Li 27)らは2型糖尿病患者に行った調査で足に症状がないものは足の毎日のチェックをしていない,または意識しているにもかかわらず,行動に移していないという報告をしている.一方,大徳らは,糖尿病患者においてフットケア介入によるセルフケア行動が改善したことを示した42).医療者は,利用者ができる範囲内で足へのセルフケア行動が向上するような働きかけをしていく必要があると考えられる.また,歩行できる,できないにかかわらず,介護スタッフや家族が足のケアに関わることもあるため,今後は,介護スタッフや家族へのフットケアの知識の向上を促進していく必要がある.Ⅶ.結論本調査では,足に問題を抱えている在宅高齢者が予想以上に多いこと,足の問題が高齢者の日々の生活に大きな影響を与えているにもかかわらず,あまり気に留めていないこと,日常的なセルフケア行動も十分になされていないことが明らかになった.しかし,今回,今まで訪問看護で関心の薄かった足をテーマとして研究に取り組んだところ,この調査をきっかけとして対象者のみならず,家族も足への関心を持つようになっていった.今後,在宅医療に関わる医療者や介護スタッフは足への関心を高め,足を観察し,足をケアするための技術と知識の向上への取り組みが必要であると考えられる.また在宅における足に関する実態調査および介入研究のデータ蓄積が必要である.Ⅷ.研究の限界と今後の課題本研究の質問紙と足趾の開き具合に関する観察項目は,先行文献や著者のフットケアの学びから自作したもので,統計的に信頼性,妥当性の検証をしていないこと,認知症や高次脳機能障害を有する人も含めた調査であったため質問に対する回答が得られない場合が? 177 ?