ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号

矢部哲也つくり運動1時間目終了直後(Post 1)で有意な低下が観察された.さらにPreと体つくり運動5時間目終了直後(Post 2)においても有意な低下が認められた.2.心理的ストレス反応測定尺度心理的ストレス反応測定尺度においては,1学年と2学年に分けて分析を行ったところ,2学年のHigh群において体つくり運動1時間目開始直前(Pre)と比較し体つくり運動5時間目終了直後(Post)で有意な低下が認められた.また心理的ストレス反応測定尺度の下位尺度である抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力をそれぞれ抽出し検討したところ,それぞれHigh群においてPreと比較しPostで有意な低下が認められた.さらに無気力に関してはMiddle群においても,Preと比べPostで有意な低下が観察された.さらに下位尺度とストレス水準,学年に分け,それぞれの体つくり運動実施前後の変化量(Pre?Post)について分析したところ,下位尺度である無気力においてMiddle群で1学年と比較し2学年でより大きく低下していた.Ⅳ.考察体つくり運動の授業を行った結果,子ども版状態不安尺度STAICにおいて,1学年と2学年のそれぞれでHigh群においてPreと比較しPost 1とPost 2で有意な低下が認められた.ここから今回の体つくり運動により運動量が確保され,不安を抱えていた生徒に対し,その不安症状を軽減することができたと考えられる.16?56歳の女性をトレッドミルを使用した運動やエアロビクス,ストレッチ,マッサージの3種目に分け,それぞれの種目を30?60分実施させたところ,運動を行った群において,実施前に不安症状の大きかった者は実施後に不安症状が有意に低下していたと報告している.反対に実施前に不安症状の小さかった者(STAIによる測定結果が28以下)は実施前後を比較しても変化は少なく,実施前に不安症状の大きかった者ほど実施後の変化量は大きかったと述べている5).本研究においてもPreにおいて不安状態の高かった者はPostにおいて変化量が大きく,先行研究と同様の変化を示した.しかし今回実施した体つくり運動は5時間の授業にわたりさまざまな種類の運動を行ったため,運動課題内容や運動形態,運動強度などが先行研究と必ずしも一致しておらず,不安症状にどのように影響したか明確にすることができなかった.今後は運動の種類を絞り体つくり運動の効果を詳細に検討していく必要がある.さらに蓑内ら12)は運動に対する満足度や楽しさ,好嫌,重要性などを自分自身がどのように感じているか調査したところ,運動に対して肯定的な感情を持つ者において感情や気分の改善が大きい傾向がみられたとしている.このような先行研究もあることから生徒の日頃の運動量や運動に対する捉え方などの個人差も考慮しなければならない.本研究では生徒の運動習慣や運動に対する主観的評価は行っておらず,保健体育の授業に対しどのような感情をもっていたか知ることができなかった.今後,生徒の運動習慣や保健体育の授業に対する捉え方を明らかにし,不安症状が改善した要因を詳細に検証していく必要がある.心理的ストレス反応測定尺度の下位尺度である抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力をそれぞれ抽出し検討した結果,すべての要素に対しHigh群においてPreと比較しPostで有意な低下が認められた.Mourady et al. 14)は,女性141名を対象に1週間の運動量と健康指標がどのように関係しているか調査したところ,低強度(1.5?3.0METs)と中強度(3.0?6.0METs)の運動を実施していた者において精神的健康との間で正の相関がみられたと報告している.そして精神的健康の中でも特に抑うつ症状の改善に効果があったと述べている.本研究では体つくり運動の運動強度を測定しておらず,先行研究と一致する強度を提供することができたか不明であるが,授業内容から推測するとおおよそ低強度から中強度の運動に当てはまるのではないかと考えられる.? 187 ?