ブックタイトル森林のたより 721号 2013年10月
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森林のたより 721号 2013年10月
スイス連邦環境省へようこそ今回、私たちが訪問したのは、ベルン市にある連邦環境省(Bundesamtf u rUmwelt)通称、BAFUです。ここでは、森林関係の副部長(日本なら県本庁課長クラス)を4年間務めているブルーノ・ロゥーシさんから、スイスの森林・林業政策の概要等を説明してもらいました。ブルーノさんの話によると、年間1?2回、韓国や日本等のアジア圏から視察にやってくるそうですが、アジアの情報は少ないので情報交換できることは有益だと話されていました。BAFUの業務内容は多岐にわたり、自然資源(土壌、水、森林等)の持続可能な利用、林業採算性の改善やサプライチェーンの強化、自然災害への対応、人間の健康保持、生物多様性の保全等を担っています。またBAFUの組織は大きく5つの部門に分かれており、このうちの2つが森林関係とのこと。ちなみに職員数は全部で約500人、うち約30人が森林関係の業務に従事しています。九州ぐらいの面積しかないスイスですから日本との直接比較は難しいのですが、BAFUは日本でいえば環境省と林野庁に相当する機関ですから、ずいぶんとスリムな印象です。ただし、日本と違ってスイスは連邦制を採用しているため、BAFUの国内業務は各州の取りまとめや広報、法律の制定等が主なものであり、事業の実行部分は制度設計まで含めて各州が担っていますので注意が必要です。このような背景もあってBAFUは他部署との関係構築を大切に考えており、特に生物多様性や狩猟等の分野では様々なプロジェクトを通じて積極的な連携を図っているそうです。スイスの森林・林業政策について石油や石炭といった国内資源に乏しいスイスにとって森林はとても大切な資源の一つですが、一方で、森林の約40%が保安林に指定されており、人々の暮らしを守る大切な存在でもあります。このためBAFUでは世界トップレベルの専門家たちを集め、日々、森林を守りながら最大限に利用するための調査研究を行っているそうです。またスイス林業全体を俯瞰すると、世界有数の人件費や山岳地域の多さといった諸条件から、経営的にはマイナス収支が続いていますので、この部分の改善も必要と考えられています。現在、スイス国内における木材利用量は、国内森林の年間成長量の約80%に相当しており、これを10年後までに100%にするため、以前ご紹介したHo l z 21等のキャンペーンを展開して木材利用の拡大を図っています。近年、法改正により木造の高層建築が認められるようになったのもこの取り組みの一環とのことです。【参考:2013年7月、木造7階建てのビルがチューリッヒ市の都心部に竣工しました。設計者は日本人建築家】ところで、こうした説明の中で特に興味深かったのが、広葉樹の利用拡大に関する取り組みです。高品質な広葉樹であれば、量は少ないけれども高級家具等の材料として確実に販売することが出来ます。一方、品質の低い物はチップ化され、エネルギーとしての利用が進んでいます。問題は未だ使途が限られてしまう中品位の広葉樹で、これらは目に付かない壁の裏側に使用されたりラミナ材等として利用されていますが、それだけでは不十分であることから、使途拡大に向けた研究が進められています。参考まで中品位の広葉樹に関する使途拡大の一例を教えてもらったところ、ブナ材を建物の外壁に利用する際、これまでは腐朽対策のために表面を塗料でコーティングしていたのですが、木材中の腐朽に弱い物質を熱処理で除去することで耐腐食性を高める新たな技術開発が既にスタートしていることを教えてくれました。スイスの林業関係従事者について全体としては減少傾向にありますが、スイス国内の林業従事者数は2008年現在、外国人労働者を除き4,881人(Jahrbuch wal d und Hol z 2012)。これを2001年と比較すると、公的機関の林業従事者が▲54%、民間企業は▲3%となっています。また統計的には森林所有者が約20万人、自伐林家が約3万人いるのですが、近年、自伐林家による事故の多発が問題となっています。このためスイスでは、自伐林家を対象とした有料の講習会が開催され、この講習受講に必要な費用については、連邦が40%、州も一部費用を補助しています(残額は自己負担)。なおチューリッヒ州の場合、自己所有林は例外として、他人の森林で仕事を請け負う際には、この講習受講が義務付けられているそうです。しかしブルーノさんは更に一歩踏み込み、今後はスイス全土で林業従事者にこの講習受講を義務付ける新しい法律を作りたいと話していました。それでは今回はここまで。皆さん、また来月お会いしましょう!Bis nachsten Monat.Tschus!●詳しい内容を知りたい方はTEL058ー272ー8491森林整備課までスイスで学んだ受け継がれる森づくり・人づくり【森林整備課中村幹広】10スイス連邦環境省(ベルン市)19 MORINOTAYORI19 MORINOTAYORI