ブックタイトル森林のたより 721号 2013年10月

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概要

森林のたより 721号 2013年10月

岐阜県のツキノワグマ2:クマとのトラブルを避けるには?特定研究補佐員森元萌弥岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター恵みの森林の住人たちもりろうとして威嚇をしてくる事があるが、その際も背を向けて逃げてはいけない。母グマの威嚇を攻撃へと発展させてしまう恐れがあるからだ。落ち着いて対応することが重要である。しかし、そのような場面で理性的に行動することは現実的に非常に難しく、鉢合わせして対応を取る時間もないままに攻撃を受ける場合や、既にパニック状態にある個体に襲われてしまう場合などもあるだろう。最も重要なことはそのような場面を作らないこと、ツキノワグマと遭遇しないことなのだ。山林に入る際に鈴やラジオを携帯することは、人の存在をツキノワグマに知らせ、ツキノワグマに遭遇を回避してもらう効果がある。里の周辺ではカキ・クリ・ドングリなどツキノワグマを里に呼び寄せてしまう樹木(図4)を伐採する、あるいは幹にトタンを巻いてツキノワグマが利用できないようにするなどの取り組みが効果的だ。行政や消防、警察の対応では、出没したツキノワグマに対する無理な追跡や捕獲を避け、パニック状態のツキノワグマを作り出さないという視点が必要である。観光地のような、多数の人とツキノワグマが同所に存在する可能性のある場所では、人がツキノワグマを囲い込まないよう配慮された、観光地利用のルールの整備が重要となる。ツキノワグマは誤解されることが非常に多い生き物だ。その誤解に基づいた対応をしてしまうと、事態が解決しないばかりか、悪化させてしまうこともある。ツキノワグマという存在を正しく理解することが、ツキノワグマと人の双方にとって幸せな未来を作る大きな一歩になるのである。岐阜県ではほとんどの地域でツキノワグマの目撃があり(図3)、どの山林であってもツキノワグマに遭遇する可能性がある、と考えなければならない。これは目撃の有無に関わらず、人が山林に入る際に持っておくべき心構えである。ツキノワグマによる人身事故が発生するのは、「人と至近距離で鉢合わせして驚いたために攻撃・逃走する」、「母グマが子グマを守ろうとして威嚇・攻撃する」、「人の密集地帯にツキノワグマが入り込み、パニックを起こして攻撃する」場合であり、ツキノワグマが自身の身を守るために攻撃する場合がほとんどだ。ツキノワグマによる人身事故は、ツキノワグマも人も望まない結果なのである。では、ツキノワグマと遭遇した際、襲われないためにはどうすればよいのだろうか。急に動かず、背を向けずに、ゆっくりと距離を取ることだ。母グマが子グマを守4図4里の周辺のカキノキに残されたツキノワグマの爪痕図3平成19年~24年にツキノワグマの出没が確認された地域7 MORINOTAYORI