ブックタイトル森林のたより 721号 2013年10月
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森林のたより 721号 2013年10月
岐阜県立森林文化アカデミー●杉本和也活かす知恵とを森林人10●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525森林文化アカデミーまでシミュレーションによる林道・作業道の経済効果の推定この頃、山に入ると林業作業用の道を見ることが多くなりました。この「森林のたより」でも林道や作業道に関する記事が多くなっています。それだけ木材生産を行うためにはインフラとしての道が必要になるのですが、実際道を作ることにより、どれほどの効果があるのでしょうか。道の経済効果を数値で測る方法としてシミュレーションがあります。今回、システムダイナミクスという考え方を取り入れたシミュレーションモデルを構築しました。要素間の関係式を組み込んだモデルを時間で微分することにより、シミュレーションするものです。システムダイナミクスモデルでは、地球システムや生態系システムなどいろんな要素が複雑な因果関係により絡み合うシステムをシミュレーションすることもできます。スイスのシンクタンク「ローマクラブ」の「成長の限界」で地球の限界を示したシミュレーションにも、このシステムダイナミクスモデルが使われました。複数の工程から構築され、各工程の効率が樹種や木の大きさなどいろんな要因に左右される素材生産にも適用できます。道の経済効果を検討するため、路網密度を変化させて、シミュレーションを実行してみました。図のような生産システムを想定しました。シミュレーションの結果、路網密度がhaあたり50mだと、木材生産コストはm3あたり10‘000円程度かかりますが、密度が増加するにつれコストは減少し、路網密度がhaあたり200mだと5‘500円程度に下がります。路網密度を50mから200mに増やすことで、m3あたり4‘500円の利益が増加することになります。もちろん道の開設費用が必要なので、初期投資を考慮に入れると利益の幅は小さくなりますが、道の経済効果が大きいことは理解していただけたのではないかと思います。ちなみに日本の平均の路網密度はhaあたり20m弱です。日本にも木材製品を輸出するドイツの路網密度が100m程度であることを考えると、インフラ整備の時点で競争力に差がついていることが分かります。実際には、適地以外に開設するとメンテナンスコストが高くなったり、経済的な機能以外にもレクリエーション機能があったり、様々な検討項目がありますが、経済効果については、シミュレーションが有効です。今回は道に関してのシミュレーションでしたが、作業時のデータの蓄積があれば、木が大きくなった場合や樹種が変わった場合など、様々なシミュレーションが可能です。製造業や小売業においては、設備投資の効率化や流通コストの最適化など意思決定において、シミュレーションが果たす役割は、とても重要です。林業をめぐる経済環境は厳しいですが、より精度の高い意思決定を行うためには、今後のシミュレーション技術の発展に期待です。02,0004,0006,0008,00010,00012,0000 100 200路網密度(m / h a)木材生産コスト(円/m3)3工程を一人で担当シミュレーションで想定した木材生産システムシミュレーションによる路網密度と木材生産コストの関係伐木チェーンソー1人積込グラップル(1人)運材フォワーダ(1人)はい積グラップル(1人)造材プロセッサ1人集材スイングヤーダ2人8MORINOTAYORI