ブックタイトル森林のたより 726号 2014年03月

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概要

森林のたより 726号 2014年03月

高い山にすむトガリネズミ寄附研究部門教員(助教)森部絢嗣岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター恵みの森林の住人たちもり価されている。生息調査が行われていないこともあり、2001年以降の生息確認情報はほとんどない。両種ともに本州では標高1000m以上の場所で確認されている。その生息分布は、ブナクラスの分布と似ている。実際に2000m級の山と連続するブナ林内で生息が確認されることが多い。アズミトガリネズミは、シントウトガリネズミよりも高標高地域に生息しており、標高2000mから森林限界を超えた3000m級の尾根上でも発見されている。時には山小屋のネズミホイホイに貼りついていることもある。山小屋の従業員に「鼻の尖がったネズミをみたことありませんか」と聞くと「あぁ?、あるよ」と答えることが多い。トガリネズミの仲間は身体が小さい。中でもチビトガリネズミS.minutissimusは体重1.5?2.0グラムであり、世界最小の哺乳類のひとつである。シントウトガリネズミは、体重5グラム前後で、アズミトガリネズミは、3?4グラムである。アズミトガリネズミは、岐阜県最小の哺乳類である。両種とも寿命は短く、2年を超えるものはほとんどいない。高標高の多雪地域に生息するが、ヤマネのように冬眠はしない。常に昆虫やクモ、ジムカデ類などを食べて、越冬している。トガリネズミ類の飼育下での繁殖は極めて困難であり、日本産トガリネズミ類の繁殖成功例は報告されていない。トガリネズミ類のジャンプ力は、ネズミ類とは異なり、15cm程度の壁を乗り越えることができないほど低い。そのため、生息地にあるU字溝や集水マスに落ちると登ることができず、そのまま死んでしまうことがある。岐阜県の高い山にすむトガリネズミという動物がいる。名に「ネズミ」とついているが、いわゆるハツカネズミやドブネズミといった齧歯(げっし)類の仲間ではなく、モグラやトガリネズミといった食虫類(トガリネズミ形目:旧モグラ目)に属する(12月号で紹介したカワネズミと仲間)。日本には、6種のトガリネズミ類が分布しており、その内のアズミトガリネズミS. hosonoi(図1)とシントウトガリネズミSorex shinto※(図2)が日本固有種である。前者は本州中部のみ、後者は本州、四国、佐渡島に生息している。岐阜県においては両種が確認されているが、存続基盤が脆弱な種として岐阜県版レッドデータブックで準絶滅危惧種と評9※過去の文献中では、ホンシュウトガリネズミS. caecutiens shintoとされているが、現在ではシントウトガリネズミS.shintoとして独立種となっている。亜種名は、本州産がホンシュウトガリネズミS. s. shinto、四国産がシコクトガリネズミS. s. shikokensis、佐渡産がサドトガリネズミS. s. sadonisである。図1.アズミトガリネズミ図2.シントウトガリネズミ図3 .トガリネズミの生息地の一例(ブナ林)。岩の脇の腐葉土中には、トガリネズミが利用するトンネルがある。5 MORINOTAYORI