ブックタイトル森林のたより 727号 2014年04月
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森林のたより 727号 2014年04月
●詳しい内容を知りたい方はTEL058ー272ー8491森林整備課までスイスで学んだ受け継がれる森づくり・人づくり【森林整備課中村幹広】16明るい日差しの下でのインタビューエコロジーとエコノミーの両立性ところで、これまでお伝えしてきたように、スイスの森づくりはとても多様性に富んでいて、それを実現するための手段も各地域で様々です。しかしスイスで出会った林業関係者全てに共通するのは「エコロジーとエコノミーは両立する。そして両立のために必要なシステムを森とともに次世代に引き継ぐ」という考え方です。何故これほどまでに、林業関係者の間で次世代への継承が徹底されているのか、スイスが辿った歴史にその秘密があるのか、あるいは道徳教育など学校生活の中である程度身に付けられたものなのかについて彼らに質問してみました。すると流石にこの質問は想定外だったらしく、しばし沈黙した後にバッハマン氏が話し始めました。※注、通訳の山脇さんが少し補足説明しています。『美しく豊かな森を次世代に引き継ぐのは林業関係者にとっては当たり前のことだから、そんなことを考えたこともなかった。ただ、そうしたことを道徳のような授業として特別に教えられた記憶はない。大切なのは今だけを見ることではなく、先人たちの森づくりの結果、今、我々が恩恵を受けているということ。このことに感謝すると、自分たちが次の世代へ森を受け渡す時にもっと森を良くしたいと思うようになり、それが自分の仕事のモチベーション(社会共通の職業に対する意識・誇りのようなもの)になる。ただ、スイス中のあらゆる分野がこうした次世代のことを考えているかはわからない。例えば銀行員のような経済を学ぶ人たちは、持続という概念を常に考えているかどうかは怪しい。※もちろんリーマンショック当時への皮肉です。そしてスイスの森を見た場合も、いつも森づくりが上手くいっていた訳ではない。およそ200年前のスイスでは、たくさんの森を皆伐した結果、土砂崩れや洪水などの大災害が頻発するようになってしまった。これはつまり、その当時の人たちは先人たちの仕事の結果として被害を受けたということ。流石にこれでは拙いということで、「未来の人たちのため」というだけではなく「自分たちの命を守る」という意味も含めて自らの行動を変えた。その際、雪崩防止柵の設置や治山工事による対策も検討されたが、その手法だけではスイス全土を守るために途方もない費用が必要であると分かり、最も効果的な国土保全の方法として林業による森づくりが選ばれた。しかし、森の反応はとても遅い(一気に森になる訳ではない)ため、その時に始めたことが次の世代の利益になったということ。スイスの森の場合は、それがとても大きいと思う。この質問に対して一つ言えるのは、森林作業員は森づくりの作業を通じて、そしてフォレスターは森づくりのプランニングを通じて、森をいかに持続させるかを最初から徹底的に叩き込まれる。だから林業関係者はそれが当たり前のこととして捉えているのではないか』とのことでした。今回のインタビューでは、スイス林業における人材育成方針の背景や具体的な教育内容の一端を知ることが出来ましたが、日和見的に人材の育成方針を変更していないからこそ、美しく豊かな森もまた、しっかりと受け継がれているのだと感じました。それでは今回はここまで。皆さん、また来月お会いしましょう!Bis nachsten Monat.Tschus!学校に対する学生たちの評価は?今回も引き続き、フォレスター学校で学ぶ学生たちへのインタビューの模様についてご紹介します。卒業を前にして、学校の教育方針やカリキュラム、そして彼らが何をもっと学びたかったのか少し詳しく尋ねてみました。ロマン氏は『学校で学んだことの多くはセオリー的なことだったので、もっと実践的なことを学びたかった。そういう意味では、もっと選木を学びたかった』とのこと。他方、バッハマン氏は『木材生産と林業経営についてもう少し学びたかったが、自分の興味がある分野は自分で深めるべきだと考えている。学校のカリキュラムは、そうしたリクエストに応えられるようになっているので何も問題は無いと思う。それにフォレスター学校はいろんな州から人が集まる場所で、それぞれにモチベーションは異なる。だから今のようなジェネラリストを養成するシステムが良いと思う』と話してくれました。卒業後、「さらに学びたい」ことは?ロマン氏は少し考え込んだ後『今はまだわからない。仕事をする中で学びたいことの要求が自然に高まってきたら、その時に知識を得るための手段を考えたい。興味があるという意味で言えば皆伐。皆伐現場を見た経験が無いのでスウェーデンに行ってみたい』とのことでした。もちろんここで『それじゃ日本に来たら良いんじゃない?』という会話が同席者同士で交わされたことは言うまでもありません。20MORINOTAYORI 20MORINOTAYORI