ブックタイトル森林のたより 727号 2014年04月

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概要

森林のたより 727号 2014年04月

謎のモグラ、ミズラモグラ寄附研究部門教員(助教)森部絢嗣岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター恵みの森林の住人たちもりで立体的な動きを行うためである。モグラ型の中でもっとも小さいミズラモグラは、ヒミズと同程度の大きさであるが、その形態的な違いは顕著である。モグラのトンネル径の大きさは、身体の大きさに比例する。大型のコウベモグラでは長径が-4045 mm、短径40 mm(図3)、中型のアズマモグラでは長径-3540mm、短径-3035mm、小型のミズラモグラでは長径30mmと短径が20mm前後である。モグラのトンネル径を計測するだけで、捕獲をしなくてもどの種が生息しているか確認することが可能である。ただしヒミズもトンネルを作るため、小さい径のトンネルがあるからといって、ミズラモグラとは限らない。実際に長野県では、ヒミズとミズラモグラが同じトンネルで捕獲されたことがある。このような小型のトンネル径の場合、地表に土を出したモグラ塚が形成されていれば、ミズラモグラである可能性が高い。岐阜県のミズラモグラは、白川村、高山市荘川町、中津川市付知町、恵那市岩村町、下呂市萩原町などの中標高以上の山間部で確認されており、岐阜県の準絶滅危惧種に指定されている(岐阜県レッドデータブック)。本種の捕獲は極めて難しく、生息確認のほとんどが偶発的な拾得や捕獲によるものである。そのため、生態学的知見もほとんどないのが現状である。隣の滋賀県では、ミズラモグラの営巣が標高260m地点のコナラが優占する林の地中で確認されており、生息可能な環境が低標高域でも存在することが報告された(相良ほか2008)。この論文で紹介されているミズラモグラの見つけ方は、担子菌ナガエノスギタケHebelomaradicosumを手掛かりとしている。ナガエノスギタケは、ブナ科やカバノキ科が優占する林のモグラ類の巣の近傍にある排泄所から特異的に生えることから、「モグラノセッチンタケ」とも呼ばれる。そのキノコの菌糸を地中内へたどれば、モグラの巣にたどり着けるのである。相良氏はこの方法で、初めてミズラモグラの未離巣幼獣を見つけている。滋賀での生息状況を考えれば、岐阜県においてもミズラモグラが低標高地域にも生息している可能性がある。もし林内でナガエノスギタケを見つけたら、その下にモグラの巣があり、それがミズラモグラのものかもしれない。日本には4属8種のモグラが生息しており、そのうち岐阜県に4属5種のモグラが確認されている(図1)。いわゆる完全地下性のモグラは3種で、ミズラモグラEuroscaptor mizura、アズマモグラMogera imaizumii、コウベモグラM.woguraである。半地下性はヒミズUrotrichus talpoidesとヒメヒミズDymecodon pilirostrisである。このように5種ものモグラが狭い地域に生息していることは、世界的にみてすごく珍しく、岐阜県に今なお多様な自然環境と生物が残されている証である。地下性モグラ(モグラ型)と半地下性モグラ(ヒミズ型)の外部形態の大きな違いは、主に前肢と尾である(図2)。モグラ型では、前肢が大きく発達し、土を掘ることに適している。また尾は、空間の限られたトンネル内における方向転換で邪魔になるため、短い。ヒミズ型のように尾が長いのは、モグラ型より地表参考文献相良直彦ほか.2008.滋賀県朽木におけるミズラモグラの存在,とくに低標高の地における生息について.哺乳類科学48:31-38.図3.コウベモグラのトンネル図2.生息環境によるモグラ類の形態差図1.岐阜県にも生息するモグラ5種の仮剥製標本。上からヒメヒミズ(長野県産)、ヒミズ(長野県産)、ミズラモグラ(長野県産)、アズマモグラ(長野県産)、コウベモグラ(愛知産)105 MORINOTAYORI