ブックタイトル森林のたより 727号 2014年04月

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概要

森林のたより 727号 2014年04月

岐阜県立森林文化アカデミー●横井秀一活かす知恵とを森林人16●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525森林文化アカデミーまで林業に多様性を生態系は、種の多様性が低くなると脆弱になります。また、それを構成する生物種も、遺伝的多様性が低くなると、環境への適応力が損なわれるため、絶滅の危険性が高くなると言われています。こうした「多様性が低くなると弱くなる」ということは、何も生物界に限ったことではなく、私たちの身の回りの様々なことに当てはまります。各地で繰り広げられる森林施業、大きく見れば林業のあり方と言ってもいいでしょうか、それも同様だと思います。木材生産を目的につくられた人工林は、ほとんどが針葉樹林です。人工林以外の森林は、広い意味では全て天然林です。その中のごく一部が、人手がほとんど入っていない自然林(狭い意味での天然林)です。それぞれ、構成樹種が異なり、それは個々の森林によっても異なります。それに応じて、そこに暮らす樹木以外の植物や動物も様々です。経済活動として林業を営むとしても、それにより地域の生物多様性を損なうことは許されません。そうならないためにも、地域毎に多様な姿の森林が存在することは、とても大切なことです。人工林に目を向けると、その主要樹種はスギとヒノキでしょう。生産効率からそれらを一斉林として育てるのはよしとしても、単一樹種だけを育てるのは、危険です。害虫による大被害が起こるかもしれませんし、特定樹種に対する需要や価格が激変するかもしれません。一つの経営体の中で、あるいは地域の中で、複数の樹種を育てれば、様々なリスクを軽減させ、逆にチャンスを広げることができるでしょう。適地適木を守れば、自ずと複数樹種を育てることになります。針葉樹材を大きく分けると、並材と役物があります。役物は以前に比べると需要は減少しましたが、それでも高値で取引されています。並材と役物、どちらにも需要があり、どちらの生産を目指すかで、保育過程が異なります。市場のニーズに応じて、保育も多様であることが必要です。林業の大きな流れは、コストの削減と木材の安定供給を目指した、施業の集約化です。大型の製材工場や合板工場などの大口需要に応えるために、また、いっこうに進まない森林整備を進めるために、集約化による施業規模の拡大は必要なことです。その一方、小口の木材需要に応えるのも林業の使命です。小口の需要では、様々な規格の材が求められることもよくあります。こうした需要への対応は、小さな規模の施業が得意とするところです。小規模林業は、また、木材に付加価値を付けるような丁寧な施業や販売がしやすいという利点もあります。様々な規模での施業、それに基づく経営が行われてこそ、林業界全体が活気づくのだと思います。これら以外にも、林業において考えるべき多様性はたくさんあります。例えば、伐期や林齢です。林業事業体の形も、いろいろあっていいでしょう。林業が多様であることは、林業が健全であることの証しではないでしょうか。それを実現する鍵は、私たちの主体性―自ら考え行動すること―にあると思います。森林の姿の多様性人工林の樹種の多様性保育の多様性施業規模の多様性景観レベルでの多様な森林6MORINOTAYORI