ブックタイトル森林のたより 736号 2015年01月
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森林のたより 736号 2015年01月
ニホンジカの採食による落葉広葉樹林の下層植生の衰退恵みの森林の住人たちもり19寄附研究部門教員・准教授角田裕志岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター今回は、平成25年度から26年度の2年間で県内305箇所の現地調査結果に基づき、岐阜県内の落葉広葉樹林(林内の光条件が近いアカマツ林も含む)林床の下層植生に対するニホンジカ(以下、シカ)の採食影響について紹介する。調査方法は林縁から数十mほど入った林内に約20m四方の調査区画を設定して、樹高1~3mの低木類とササ類の被度(調査区画に占める割合)を目視で判定し、被害の程度に応じて6段階にランク付けする(NDは被害無し、D0~D4は数字が大きくなるほど被害が大きい;図1)。合わせて、採食痕や糞などのシカの生息痕跡、本誌前号(平成26年12月発行)にて紹介した低木樹種等への被害状況、高木層・亜高木層樹種への樹皮剥ぎ被害、リター層の損失度や土壌浸食程度なども調査する。この手法は、「低木層衰退度ランク」と命名されており、その英語表記(Shrub-layer Decline Rank)を略してSDR調査と呼ばれている。本調査は兵庫県森林動物研究センターの藤木大介博士が考案した方法であり、広域(市町村~県レベル)多地点でのシカによる採食影響の把握を目的としている*。植物に詳しくない者でも実施できるように設計されており、兵庫県のほか京都府、滋賀県、福井県などの岐阜県の隣接県でも実施されている。岐阜県内における調査結果は図2のようであった。シカの生息密度が高いとされる西濃(大垣市~揖斐川町中央部、本巣市根尾川沿い)と郡上市・下呂市を中心とした中濃では顕著な下層植生の衰退が起こっており、林床植生が全く見られない地点も多かった。その一方で、飛騨や東濃、西濃北部(揖斐川町坂内など)では、低木類やササ類が密集した深い藪が形成されている箇所が多く、シカに採食影響は軽微の地点が多かった。ただし、飛騨東部や東濃南東部(長野・愛知県境など)では顕著な採食影響が発生している地点が複数確認され、シカが高密度化していると考えられた。これらの地域では狩猟や有害捕獲によるシカの捕獲数が少ないため、今後シカの分布拡大に伴って被害が一気に拡大する懸念もある。早急に対策の検討を始める必要があるだろう。今後、県が進める捕獲対策の強化地域選定などを計画する際に本調査結果を活用し、より効果的なシカの個体数管理を進めていくことが望まれる。*藤木大介(2012)ニホンジカによる森林生態系被害の広域評価手法マニュアル.「兵庫県におけるニホンジカによる森林生態系被害の把握と保全技術(兵庫ワイルドモノグラフ4号)」(兵庫県森林動物研究センター発行),pp. 2-16を参照のこと。なお、この文献は兵庫県森林動物研究センターのホームページ(http://www.wmi-hyogo.jp/index.html)にて無料公開されている。図1 SDRのランクごとの林内の下層植生の状況。図2岐阜県内のSDR分布図。冷色系から暖色系になるほどSDRが上がり、シカによる採食影響が大きいことを示している。NDの林分(白川村)D2の林分(垂井町)D0の林分(高山市)D3の林分(大垣市)D1の林分(恵那市)D4の林分(郡上市)MORINOTAYORI 10