ブックタイトル森林のたより 736号 2015年01月

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概要

森林のたより 736号 2015年01月

●詳しい内容を知りたい方はTEL0575ー35ー2535森林技術開発・支援センターまでがありました。オーストリア・ピッヒル林業研修所オーストリアで最初に設立(1947年)されたピッヒル林業研修所では、マルティン・クロンドルファー所長の案内で施設や演習林を視察しました。この研修所では、林業専門作業員、森林マイスター、バイオマス専門作業員の職業教育を主体としていますが、オーストリアの森林の約80%が民有林(平均森林所有面積は約30ha、森林からの年間所得は1万5千ユーロ・約210万円)であり、個人で森林経営を行う人が少なくないことから、そうした人たちを主な対象とする演習講座や各種セミナーも開催しています。ちなみに研修所が所管する330haの森林からは年間3,000m3(9.1m3/ha)の木材が生産され、うち約750m3が研修を通じて生産されるそうです。また演習林では、チェーンソーの伐倒実習を見学しましたが、これは6人までの生徒(実務経験3年以上)に対して教員1人が間伐作業の指導を行う林業専門作業員研修(研修期間は5週間)でした。このほか研修所内でタワーヤーダを小型化した訓練用の模型や、油圧で曲げ応力がかかった状態を再現可能な風倒木の安全処理技術を学ぶための玉切体験装置などを見学し、常に技術者の安全を第一と考える教育システムはとても参考になりました。マイヤー・メルンホフ社オーストリア最大の森林所有者でもある林業会社のマイヤー・メルンホフ社では、製材工場や林業架線集材現場、タワーヤーダの製造工場をヨハネス・ロシェック氏の案内により視察しました。年間110万m3を製材するレオーベンの本社工場では、トレーラーの荷台に積まれた4mのトウヒ材が大型グラップルにより一度に選木機に投入され、毎分110mのスピードで径級別に区分けされていきます。土場には約2万m3の剥皮された丸太が連なります。製材ラインでは丸太の太さや採寸の違いにより2ラインが使い分けられ、コントロールルームでは、これら全ての作業をわずか1人で監視しています。担当者の説明によれば「通常より遅めの設定」とのことでしたが、5,000m3/日が製材される様は圧巻です。しかも製材によって生じるはずの端材等はほぼ見当たらず、どうやらそのままバイオマス利用施設へと運搬されている様子。とにかく一連の施設規模には圧倒されてしまいました。午後からは標高1,200mの林業架線集材現場を視察するため、ワンボックスのタクシーで林道を平均時速約40kmで移動しましたが、車内は振動も少なく、その快適な走行性にはだだ感心するしかありませんでした。林業架線現場では、トラックにタワーヤーダとプロセッサを搭載した自社製のコンビマシンによるスムーズな作業システム(2人体制)を間近に見学し、また最後にはタワーヤーダの製造工場を訪問しました。シャーシ等の溶接工程から架線の搬器製造までがほぼ手加工に近く、加えて顧客の要求に一つずつ応じる丁寧な製造が行われていました。同じグループ内企業とはいえ大規模効率化された製材工場と比較すると、現場の細かな需要に合せたモノづくりが徹底されていることに感心します。以上がコンソーシアムによる今回の視察概要です。各視察先で知り得た新たな知見や現地で交わした意見、質疑については、その一つひとつが充実したとても有意義な内容でしたが、最後の視察先で終日対応いただいたロシェック氏が語った「オーストリアにとっての財産は、我々の目の前にあるこの森林。だからこそ我々はこの資源をしっかりと利用して利益を確保し生き延びて行かなければならないのです」という言葉は、視察参加者の心に深く伝わったと思われます。コンソーシアムでは今後も引き続き研修会等を通じて自己研鑽を図っていくこととしていますが、今回の視察研修によって、今後、岐阜県において我々が目指すべき林業・木材産業の方向性を見出すことができたと思っています。▲伐倒実習(ピッヒル林業研修所)▲タワーヤーダ現地(マイヤー・メルンホフ社)▲大型グラップル(マイヤー・メルンホフ社)MORINOTAYORIMORINOTAYORI19