ブックタイトル森林のたより 767号 2017年08月

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概要

森林のたより 767号 2017年08月

補強土壁の被災平成28年9月19?20日にかけ台風16号の豪雨により、郡上市八幡町那比地内にある林道中美濃線の補強土壁が3箇所被災しました。(写真1)いずれの被災箇所も、局所的集中豪雨により想定外の水が路面を流れ、補強土壁盛土部へ流入したことが原因であると考えられました。郡上市は補強土壁の施工実績が多い一方、これまで補強土壁が被災した事例はなく、今回の被災が初めてでした。今回、3箇所で同時に似たような災害が発生したことから、被災原因を詳しく調査し、再発防止に努める必要があると考えました。調査方法・調査結果被災のあった中美濃線では補強土壁工が数多く施工されていることから、被災箇所3箇所で挟む中美濃線約1km区間における補強土壁工16箇所(被災箇所3、非被災箇所13)を調査しました。調査項目は、1縦断勾配2補強土壁区間の線形3直近上流部の曲線半径4アスカーブの設置の有無5横断溝と補強土壁の間隔の5項目です。調査の結果、被災箇所は非被災箇所に比べ、縦断勾配が急で、横断溝の間隔が広い傾向にあることが分かりました。このことから、被災箇所は豪雨時に路面水が集中しやすく、被災のリスクの大きい場所であったと考えられます。(図1)排水対策この調査結果を踏まえ、路面水の排水対策を3つ提案します。1つ目は、路面排水用横断溝の50?80m以内の間隔での設置です。これにより、補強土壁区間を流れる路面水の量を減少させ、路面水が盛土部へ流入するリスクを減らすことができます。2つ目は、アスカーブの設置です。アスカーブの設置により、盛土部への路面水の流入を防ぐことができるため、急勾配区間や路面水が盛土部へ集まるような線形、横断溝を適正な間隔で配置できないような場所では、アスカーブの設置が特に重要となります。3つ目は、補強土壁天端における張りコンの施工です。張りコンの施工により、天端からの路面水の流入防止及び天端の洗掘防止が期待できます。以上、3つの排水対策により、中美濃線の補強土壁に係る排水対策フローチャートを作成しました。(図2)路面排水用横断溝の設置間隔及び縦断勾配を条件に含め、5パターンの状況に応じた対策を考えました。今回の被災を受け、林道施設工事において、設計・施工マニュアルや各種指針等に基づいた適切な設計、積算、施工はもちろんのこと、施設の維持管理を考えた現場に適した設計、施工を検討する必要があると感じました。今回のように現場で感じる疑問を1つ1つクリアにしていくことが技術力向上に繋がると考え、今後も地域に貢献する林道事業を進めていきたいと思います。●詳しい内容を知りたい方はTEL0575ー67ー1111(代)郡上農林事務所まで補強土壁に係る路面排水の一考察治山・林道研究課題治山、林道の各研究会では、日頃の業務で直面する課題について、調査・研究を行っています。今年2月に行われた発表会(本誌763号18?19ページ)で発表された研究課題を紹介します。郡上農林事務所林業課後藤真希写真1図1図2MORINOTAYORI15