ブックタイトル森林のたより 768号 2017年10月

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概要

森林のたより 768号 2017年10月

-スルメで釣る、ザリガニ-【第315回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira6月下旬、昨年から孫のY君が飼っているカブトムシの子供が次々と発生し始めた。土の中から角を突き出して出てくるカブトムシ。Y君は大喜び。自分が育てたのだと妹のチビちゃんたちに自慢していた。しかし、チビちゃんたちは無視。不思議そうにカブトムシを見ている。このチビッコ兄弟の姿。見ているうちに、自分の心はなごんでくる。今年もまたY君とカブトムシ観察ができる。心が躍った。ところが数日後にY君が言った。「お願いお爺ちゃん。トカゲとヘビとカエルを捕ってきて。ザリガニも欲しいな-。」思いもしない言葉に驚いた。しばらくして「カブトムシやクワガタムシにはあきたので、虫以外のものに興味がわいてきたのだろう」と思った。そう言えば私も小学生のころは故N氏とヘビやトカゲを捕って遊んだことがある。学校へ持って行き先生に叱られたこともある。しかし、そのうちに飽きてしまい虫に興味を持つようになった。これに対しY君は虫からトカゲ。私とは逆だ。思わず笑えてきた。しかし、Y君の願いはかなえてあげたい。即座に「わかった」と返答。断るとY君が悲しむだろうと思ったからである。ただ家で飼うとなると親、特に母親の了解が必要だ。母親に事情を話した。「ヘビは絶対駄目」。予想通りだった。××××まず、カエルになる前のオタマジャクシ捕りから始めた。これだったらすぐに捕れるだろうと思ったからである。近郊の水田を探した。ところがオタマジャクシはいない。水田に足を入れた。小さなものが素早く動きだし、少し先で見えなくなった。近づくとすぐに動き出すという繰り返し。よく見るとオタマジャクシだった。体が水田の土と同じだったので、わからなかったのである。しかも動きが速い。動体視力の衰えている私にはなかなか捕れない。苦労して5匹捕った。考えれば私が見たオタマジャクシはほとんどが春先。いっせいに孵化した何百匹もの集団だ。しかし、外敵の餌食や共食い、病死などでほとんどが淘汰されてしまう。この厳しい荒波を乗り越えた強者だけがカエルになるのだ。そのカエルは田んぼの畦にいた。近づくと大きく跳ねて逃げていく。これも速い。網で追いかけてもなかなか捕れない。空振りばかりだ。ここでも動体視力の衰えを痛感する。ようやく2匹捕れた。ヒキガエルだった。思わず笑みがでた。××××次はザリガニだ。これは簡単に捕れるだろうと思った。以前、小川の水生動物を調べたときにザリガニがたくさんいたからである。その場所へ出かけた。何カ所も探したがいない。結局、捕れなかった。翌日、知人から朗報を得た。某公園の池にたくさんいるので、スルメを餌にすれば釣りあげることが出来るという。早速家族で出かけた。しかし、釣れない。何故釣れないのだろうと考えている時、水中から水泡が浮き上がってきた。ザリガニが呼吸をしているのだと思い、そこへ餌を入れた。すると、すぐにザリガニが出てきてスルメを抱え込んだのである。この方法で7匹釣り上げた。しかしチビちゃんたちは釣れない。諦めて網で捕り始めた。これが正解。12匹も捕ったのである。合わせて19匹。これを大きさ別に分けた。この時、笑えることがあった。5歳のYIちゃんが大きなザリガニを手でつかんで自慢げにY君に見せた。しかし7歳のY君は手が出ない。私はY君に「つかんでみたら」と言ったものの「いやだ」と拒否。これを見ていたYIちゃんは「お母さん、Y君はザリガニが怖いんだって。弱虫だね」。これを聞いたY君。ザリガニをつかみ始めた。しかし、ザリガニがハサミをあげて抵抗するのでつかむことができない。何回も繰り返しているうちにようやくつかむことが出来た。その時の得意げな顔。今でも目に浮かぶ。しかし、YIちゃんにはしなかった。妹のチビちゃんのひと言でプライドに傷がついたのだろうと笑えてきた。楽しいザリガニ捕りであった。××××ザリガニは大きな水槽3個に入れ、市販の餌を与えて飼うことにした。ところが翌日に17匹も死亡し、残ったのはわずか2匹。しかし、この2匹は元気で食欲も旺盛だった。だとしたら死亡したザリガニは何が原因だったのか。いろいろ考えた。この池のザリガニは子供たちの遊び道具。遊び終えるとまた池に戻されるという繰り返しなので弱っているものが多い。このため死因は衰弱していたこと。こんな結論に至りザリガニが哀れに▲死亡したザリガニの一部思えてきた。オタマジャクシとカエルは大きめの昆虫飼育槽に水を入れて飼育した。オタマジャクシには金魚の餌やパンの切れ端を与えた。苦労したのがカエルだった。生きた昆虫などを食べているからである。バッタやコオロギの子供を与えたが2日後に1匹死亡した。これを見た3歳のチビちゃんが「動かなくなった。かわいそう」と泣き出した。ショックだったのだろうと胸が痛んだ。オタマジャクシには足が生え地上部を歩き始めた。これからは餌採りがさらに大変だが、何としてもカエルまで育てたいと思う。あとはトカゲだ。Y君はこれを一番楽しみにしているので、何としても捕りたい。しかし、その自信というか確率はハーフハーフだ。MORINOTAYORI 10