ブックタイトル森林のたより 768号 2017年10月

ページ
7/18

このページは 森林のたより 768号 2017年10月 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

森林のたより 768号 2017年10月

【森の名手・名人編集担当公益社団法人岐阜県緑化推進委員会専務理事黒﨑隆司】※原本は長文のため、文章の一部を割愛しています。●生年月日:昭和25年1月8日生まれ●職業:和傘轆轤づくり職人長屋一男さんのプロフィールながやかずお昭和46年に家業の長屋木工所に入社以来、和傘轆轤づくりに従事されている。長屋木工所は、日本で唯一の和傘轆轤製造事業所であり、岐阜の和傘づくりを支えている。轆轤の材料となるエゴノキの確保が困難になる中、平成24年に岐阜県立森林文化アカデミーの久津輪准教授の呼び掛けで始まった「エゴノキ・プロジェクト」に立ち上げから参加し、エゴノキを安定的に供給できるよう毎年美濃市内にて活動中である。平成27年には森林文化アカデミーの卒業生が入社・弟子入りし、技術の伝承と後継者の育成に尽力されている。名人いうよりも、組織が全然周辺と違うんやね。節のとこ目を切ってもきれいに切れないんです。そこだけ欠けちゃうんです。その次の工程が、木地引き。木地は形ができ上がってる状態。木地引き機で、原木を削って作ります。穴は、穴開けドリルで開けます。〈目切り〉今度は目切りっていう工程です。木地から目がある状態にしならんです。一番繊細な仕事です。ノコギリが回転してきます。そして目をノコギリで引きます。これで一か所目切りました。次に歯車でその隣に移動します。次の場所へくるわけです。これが40軒にかかってると、轆轤が一周すると40周ノコギリまわって、40か所目が入ってくわけです。ほんで目に穴開けるのは、目切ってまった状態でノコギリが半周しているうちに、錐がカムによって出てきて、目に穴が開くわけです。歯車をセットしたらノコギリの厚さを決め、次に錐穴の位置を前後左右調節してから目を切ります。ノコギリはいろんな厚さの物、歯車は目の種類ごとに用意してあります。刃物にしても、焼き入れも自分でします。その温度も私ら経験でやりますけど、大変です。炭をコンロでおこして、赤めます。だいたい1300度。鉄が溶ける手前くらいです。私ら色で見るんですけど、赤色通り越してオレンジ色に近づいた状態です。オレンジ色で焼き入れするんです。今は酸素バーナーで赤めてます。目の穴開ける錐もみんな、一本一本手作りです。素材をグラインダーで削って、溝つけて、先に刃つけて作るんです。切れなくなったら砥石で研いだりね。折れたら作り直したりします。錐が衝撃で折れるっていうのもあるんです。それは割と頻繁に折れます。節の固いやつ切って、曲がったり折れたりすることもあります。〈目め梳すき〉目切っただけじゃ隙間が少ないんで、骨が入らんです。で、この機械にかけて目を削る。これ目梳きっていうんです。刃物が三枚ついてます。平たいやだからほんとに今、ここ3年4年5年の内に何とかしんことには、技術的に残せても、その先産業として成り立たない。若い子にバトンタッチしても、その方の将来考えると、継いでくれって言えないのが現実です。傘にした場合、轆轤っていうのは、隠れてしまってほんとに目立たない部品です。広げれば紙とか骨とかかがり糸が目に入ります。すぼめれば何にも見えないです。だからほんとに、紙と骨を支える縁の下の力持ちやもんで、一般の人には、こういう目立たん部品も作ってる職人がいることを知っていただければありがたいなって思っております。それと、多くの人たちによって轆轤は支えられています。とても感謝しています。椋さんと関森さんです。久津輪先生は、アカデミーを代表してこのプロジェクトを立ち上げていただいた方。小椋さんは地域の山の財産管理区の「山の駅ふくべ」の責任者。関森さんは、和傘ファンの代表みたいな方ですね。実際仕事していただくのはアカデミーの先生方と学生さんと和傘業界の方、山の駅ふくべの構成員の方々なんです。三人の方のもとに、協力していただいてる方がいらっしゃってこのプロジェクトが成立する、そういうふうに考えてます。5.こだわってます。和傘っていうのは、分業なんです。職人さんの仕事を1月以上かかって、はじめて一本の傘になるんです。私らの仕事は最初の仕事だけど、最後の職人さんのことを考えて仕事する、それを考えてます。それは一番わかりやすく言うと、木地に油付けてます。目切りのための潤滑油ですが、つなぎ屋さんが骨をつなぐとき、油がついてれば針が通しやすいんです。やけどもう傘は、産業としてギリギリです。これは轆轤屋だけやなくて、骨屋さんも貼り屋さんも一緒、ほかの業種の職人さんたちみんな同じなんです。つがね。一枚目の刃物で右っ側削ります。二枚目の刃物で左っ側削ります。もうひとつ刃物あります。梳く目を次のとこ移すための刃物。これがなかったらおんなじとこばっかりぐるぐる回るだけです。目梳きの注意するところは刃物の調整です。目の幅が、厚くなったり薄くなったりするんです。轆轤は上下からの骨の圧力に対して均等に支えるもんですから、強度にばらつきがあると長く保たないんです。これで頭轆轤が終わりね。これ手元轆轤もあるんです。形が違うだけで、工程は全く一緒です。機械の調整で違う形の轆轤になるんです。4.エゴノキ・プロジェクト地域で山を整地する人がいなくなり、エゴノキを供給する業者もなくなり、材料仕入れるルートが途絶えちゃったんです。ほんでいろいろな人に相談したら、美濃市の岐阜県立森林文化アカデミーの久津輪先生が「僕がちょっと調べてみるわ」と言ってくださいました。たまたま美濃市片知に、炭を焼く窯の取り組みの取材に行かれたら、窯の周りにエゴノキがいっぱい立ってたそうなんです。それで聞いたら、「そんなもんならいっくらでもあるよ」っていう状態なんです。それから片知の方の協力を得て絞って切っていただいてます。それがエゴノキ・プロジェクトの始まりです。2013年のエゴノキ・プロジェクトは五十人位参加してやりました。地域の山から継続的にエゴノキが採取できる様に、学生さんが伐採計画をシミュレーションしてくださいました。森の管理者、森林を学ぶ学生さん、傘業界、傘愛好家の方たちが、一本のエゴノキを切り、轆轤にして傘を作り、それを使う。その流れの中の全ての人が協力して、エゴノキ・プロジェクトが成り立っています。エゴノキは、銘木やなくて雑木。ほんとに焚きもんにしかならん木なんです。私たちにとって貴重な木なんですけど、ここまで取り組んでいただけるってことほんとにありがたいことだと思ってます。中心になっていただいてるのは、久津輪先生と小エゴノキ・プロジェクト2013にて伐採したエゴノキとともに。後列中央が長屋名人、前列右側が岐阜県立森林文化アカデミー久津輪准教授、後列右側が「山の駅ふくべ」小椋氏MORINOTAYORI7