ブックタイトル森林のたより 772号 2018年1月

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概要

森林のたより 772号 2018年1月

石原英和(80)長屋徹岐阜県美濃市平成26年取材「森の名手・名人」とは、森に関わる仕事や地域生活に染み込んだ営みのうち、優れた技をもってその業を極め、他の模範となっている達人で、毎年、全国で約100名が認定されています。岐阜県においては、現在、50名の「森の名手・名人」が認定されています。この「森の名手・名人」を「森の”聞き書き甲子園“」に参加した高校生が「聞き書き取材」をしたものの中から誌面の関係上要点を抜粋したものです。なお、年齢、住所、学年は取材当時のものです。44森の名手・名人シリーズ岐阜県立郡上高等学校3年名人聞き手1.これが原料だよ和紙として使うのは楮こうぞが一番多いね。本美濃紙以外は高知県の土と佐さ楮こうぞで作る。この辺では、和紙は土佐楮がベースにある。土佐楮は、ある程度の繊維の長さがあって、長すぎず短すぎずやね。作りやすいし、いい物ができるというのが土佐楮の使われた理由やね。謄とう写しゃ版ばん原げん紙し昔、東京の堀井謄写堂ってとこが、雁皮で印刷をやったのね。学校のテストなんか先生が自分で作ったのね。謄写版原紙に問題を書いて、印刷したわけ。謄写版原紙っていうのは、紙に升目を作って、印刷してそれから蝋がひいてあるでしょ。その升目に沿っていろんな字が書ける。日本で漉いた、その紙は非常に性能がよくって、輸出して世界を席巻したことがあるんやね。本美濃紙本美濃紙は障子や提灯のために明かりを通す紙が求められるから、薄くてきれい。栃木県の那須楮を使って、強い薬品を使わずに漉いて、お日様に干す。本美濃紙保存会の会員じゃないと漉いても本美濃紙とは言われんのよ。箔はく間あい紙し箔間紙は、お仏壇に使う金箔を保護する紙。箔間紙は、原料もちゃんと決まっているの。三椏を100%使うのね。その代わり、これは、薬品を使わずに石灰を使って柔らかく煮る。ソーダ灰も駄目なの。金箔と重ねておくと薬品使ってあると箔が変色する。買ってから10年おいても20年おいても変わらないっていうのは、その製法でしか駄目ってことなのね。箔間紙ばっかりうちんとこは昔20年くらい漉いてた。3.和紙の最初はね最初はね、産地から原料を買う。今私のとこは高知県から土佐楮や栃木県から那須楮を買っとる。買った原料を昼夜水に浸す。そしたら、釜に原料とソーダ灰を入れて、だいたい3時間から4時間煮る。ほんとにいい紙作ろうと思ったら、火力が柔らかい、松を割った木で煮る。それから、塵取りっていってね、不純物を原料から取り除く。次に塵取りした後の原料を叩いたり、ビータっていう機械をかけたりして、細かくして繊紙を作ってくれっていう人には、外国産の原料を使う。今は中国から輸入してくるでしょう。そうすると、楮も作っとる人が少ない、需要も少ないもんで楮が売れなくなる、悪循環やね。雁がん皮ぴは原料の中で一番繊維の長さが短い。だから、雁皮で紙を作るとシャリっとした紙ができる。その次に短いのが三みつ椏また。三椏は、全国で一番栽培されとるかもしれん。栽培は難しいけど日本のお札を作っとるもんで、岡山県とか高知県で栽培しとると思う。これは、トロロアオイ。昔は乾くところに置いといてかんかんに乾かして水に浸して叩くんやけど、今はクレゾールっていう消毒液があるもんで、それん中につける。ある程度乾かすと薬の浸透がいいやら、乾いた分だけいい。大きな蔵の中に保存して1年あるようにして使う。毎年30キロを5つくらい。高くはなっとるわね。2.和紙はいろんなものに使える伊勢の型紙着物を染めるときの伊勢の型紙、友禅って型紙を楮で作る。京都の染め屋さんが使われる紙を私が、伊勢の型紙屋さんに持って行く。それから、京都の染め屋さんが型紙を使って模様を彫刻して友禅の型紙を彫るっていうことで、非常に繋がりがあるわけね。染めの柄をつけたときに粗いと途中から染料が漏れよる。それで、密度の濃い紙作ったらんとあかん。だから難しいところがある。本美濃紙は栃木県の那な須す楮こうぞを使う。那須楮は少し土佐楮より繊維が短くって細かいもんで、漉いたときに和紙の密度が濃いし、障子に光を通したときに非常に柔らかくいい光になる。那須楮は15キロやと7万円くらい、土佐楮は20キロで5万5千円から6万円する。今楮は高い。収量も少ないもんで、中国に楮を持って行って栽培して、また輸入する人がおる。土佐楮や那須楮以外にも今は外国産のほうが多いかもしれん。安い和紙漉き限界に挑むチャレンジャー土佐楮那須楮MORINOTAYORI 12