ブックタイトル森林のたより 772号 2018年1月

ページ
6/22

このページは 森林のたより 772号 2018年1月 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

森林のたより 772号 2018年1月

活かす知恵とを森林人61●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで森林の価値とドイツとの交流岐阜県立森林文化アカデミー学長●涌井史郎て大きな支障を生じせしめる事などがその主張の骨子であった。ところで今霞が関と永田町で森林環境税導入についての論議が佳境に入っている。シンポジウムでも前述した主張のように、こうした新財源が確保できれば、幾何かの効果は期待できる。森林の持つ多目的公益性と、林業経営の現実との乖離を多少でも埋めることができ、志を持つ自治体が財源を得て上・中・下流域を一体化する森林・林業の新たな施策展開が期待できるかもしれない。しかし水面下では、国民からの徴収額を巡って激しい駆け引きがある。また、岐阜県のように既にそうした制度を導入している自治体が30を超えている現実から、そうした先進的取り組みを行って施策の体系が一定程度の熟度を増す中、二重徴税の議論が徘徊し、結局は国が先進自治体に対し、後出しじゃんけん的位置に立つだけという過ちが生じることを懸念している。やらないよりはやった方が絶対に良い。しかし、先行して取り組む自治体に対しては制度や予算のいずれか、或いは両面においてアドバンテージを考えることが不可欠であろう。林業が魅力的な事業となり、潜在的な自給率が100%近い木材の国内での利活用が進み、伐って植えて育てる健全なサイクルとなれば、取り残されつつある山村社会が息を吹き返し、吸収源その他の公益性が未来に向けてより着実に担保されることとなろう。築、獣害対策担い手育成、森林施業の各分科会は定員を上回る参集があり、前日の7日グランドホテルで開催された「100年先の森林づくりを見据えた人材育成」というメインテーマの本シンポジウムもまた立ち見が出るほどの盛況ぶりであった。7日には法隆寺の大棟梁として知られた西岡常一氏の後継者小川三夫氏の「木のいのち木のこころ」と題する長年樹と対話をし、千年残る木造建築を目指し、古寺の修復や再建にあたってきた氏ならではの経験値からの木材に対する見方と、それに取り組む人材育成の肝の話題に聴衆は聞き入っていた。次いで林野庁森林技術総合研修所赤堀所長、ロッテンブルク林業大学Bastian Kaiser学長、日独シンポジウムの礎を築いた岩手大学・鹿児島大学からそれぞれ澤口・寺岡教授による学術講演、最後に筆者とKaiser学長、そして産業界から飛騨産業㈱岡田贊三社長による「林業・木材産業を担う人材に求める姿と我々の使命」と題するトークセッションが行われた。また会場外には、日独両国の森林・林業関係企業のブースが出展され、BtoBの商談が弾んでいた。これら全てを概観するとさる11月6日から9日まで日独林業シンポジウム2017を開催した。昨年ドイツ南部バーデン・ヴュルテンベルク州のロッテンブルク林業大学で第1回が開催され、その直後から本学が幹事となり、森林技術開発・普及コンソーシアムの参画を得て相互訪問を重ねて準備を進めてきた。ロッテンブルク林業大学と本学は、2013年に岐阜県とバーデン・ヴュルテンベルク州が協力協定を締結したのに伴い、2014年に古田知事立会のもと同様の覚書を交わし、以来両校の教員・学生の相互訪問が続き、相互の知見が高められている。そればかりか、森林技術開発・普及コンソーシアム会員の3回の訪問が行われ、林業・林産物の事業経営について、多くの有意義な収穫を得てきた。最近の両校間では、林業経営は当然のテーマとして、個別的には獣害対策、森林の多目的公益性への理解を深めるための森林環境教育分野が浮上している。それにしても、多くの林業・林産物利用関係者のご協力を得たこのシンポジウムは大きな関心を集め、8日と9日両日アカデミーで開講された、森林環境教育、木造建今回のシンポジウムは大成功の部類にと判断している。このシンポジウムで筆者は次の事を主張した。先ずは、パリ協定を考えると、今後年間9億炭素トンを吸収する森林の健全性を担保する山村社会や林業者の社会的経済的不利益を如何に公正で衡平な方向に誘導することができるのかがSDGsなど持続的未来に不可欠であること。次に、森林・林業、木材加工、木材利活用分野が、それらを上・中・下流域に擬え捉えると日本ではバラバラの状況に置かれ、地球環境問題に対し重要な機能を果たすことは頭で理解できても、目先の現実からは実感値に乏しく、とてもそうした方向に結集できない。そのブレークスルーとして、岐阜県ではアカデミーに置かれた支援センターが事務局となり、ドイツと連携しつつ上・中・下流域を一体とした「森林技術開発・普及コンソーシアム」が設立されたこと。最後にいたずらに木材産業だけが優位に立ち、山元一人負けの構図を続けると営林意欲が減退し、結果として森林が有するCO2の吸収機能の他、防災・減災や生物多様性、そして人々の精神性に寄与する等多面的公益性充足に極めMORINOTAYORI 6