ブックタイトル森林のたより 773号 2018年2月

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概要

森林のたより 773号 2018年2月

活かす知恵とを森林人62●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで里山を伐採することで希少種を保全する岐阜県立森林文化アカデミー講師●玉木一郎萌芽更新してきました。ただし、追試の場所は伐採の数年前にマツ枯れでギャップができたために、既に埋土種子の多くが発芽してしまっており、この伐採ではそれほど実生更新は生じませんでした。このように小面積皆伐で遷移の進行を止めることは、シデコブシはもちろんのこと、湿地の生態系を回復させる上で有効であると考えられます。ただし、追加で伐採した場所では、ササ(コンゴウタケ)の勢いが強く、2年目には伐採地全体に高さ1m程度までササが繁茂してしまいました。萌芽は成長が早いので問題はないのですが、実生は成長が遅いために、ササに埋もれてしまい、更新がうまくいかなくなる可能性があります。このような場所で実生更新を期待する場合は、実生が大きくなるまでの数年の間、ササ刈りをする必要があるかもしれません。岐阜県の東濃地域には地質の関係で100m2以下の小さな湿地がたくさんあります。そこにはシデコブシをはじめとした湿地に固有の植物が多く生育しています。このような湿地は斜面崩壊で形成されるのですが、時間が経つにつれ植生遷移が進行し、数十年から100年程度で発達した森林に戻ってしまいます。木は水を吸い上げるため、木を伐ることで湿地の乾燥化を防ぐことができます。里山の利用はこのような小さな湿地を保つ役割も果たしていました。シデコブシや湿地に生育する生物を保全するためには、植生遷移の進行を止めることが必要です。かつての里山利用を再現してやることで、それが可能になるはずです。燃料を採取するための里山利用では、20年程度の周期で小面積の森林を皆伐し、樹木を林外に持ち出していました。シデコブシも、軽くてよく燃えることから、焚付に使われていたそうです。つまり、シデコブシも含めて全て伐採し、林外に持ち出してやれば良いのです。希少種であるシデコブシを伐採してし東海地方の里山の希少樹木の一つに、シデコブシ(モクレン科モクレン属)があります。花が美しいので庭に植えてあることも多く、ご存じの方も多いかと思います。このシデコブシですが、現在、多くの自生地で絶滅が危惧されています。シデコブシは小高木のため、樹高が高いものでも10 m程度にしか成長できません。植生遷移が進行し、コナラやソヨゴなどの周りの樹木が大きくなると、被圧されたシデコブシは衰弱してしまいます。衰弱したシデコブシは花を咲かせることができなくなり、さらには枯死してしまうのです。またそのような暗い環境では実生も発芽できなかったり、発芽したとしてもほとんど成長できません。なぜこのような状況が生じているのでしょうか?その原因の一つに里山利用の放棄が挙げられます。1960年代ごろまでは、里山の樹木は主に燃料として利用されていましたが、燃料革命以降、ほとんど利用されることがなくなりました。その結果、植生遷移が進行してしまったのです。まうのはいかがなものか?逆に絶滅を早めてしまうのではないか?と思われる方もいるかと思います。そこで、多治見市と地元のボランティアに協力してもらい、多治見市のシデコブシ自生地の一部を小面積皆伐する実験を行ってみることにしました。2012年1月に30m×10mの範囲を皆伐し、その後、毎年経過を観察しました。皆伐直後と5年後の様子を写真に示しました。伐採されたシデコブシの9割以上は根株から萌芽更新し、さらに埋土種子からシデコブシの実生も更新してきました。また、伐採前は見られなかった湿地性の植物であるホザキノミミカキグサやミミカキグサも出現しました。湿地の水位も伐採前より高くなりました。2015年1月に追試でもう一箇所伐採したのですが、そこでも同様にシデコブシは▲多治見市のシデコブシ自生地を小面積皆伐した直後と5年後の様子MORINOTAYORI 10