ブックタイトル森林のたより 773号 2018年2月
- ページ
- 4/18
このページは 森林のたより 773号 2018年2月 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 森林のたより 773号 2018年2月 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
森林のたより 773号 2018年2月
文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹輪かんじきⅠ1501月24日、何か面白いものはないかと散策していた高山市の「二十四日市」で、輪カンジキを見つけました。カンジキは雪の中を歩くための必需品で、昔は豪雪地帯であればどこでも見られるものでしたが、今では登山用品店に行かないとなかなか見られなくなりました。カンジキは漢字で「?」または「橇」と表記されます。ちなみに「橇」は一般的にはソリと読みますが、飛騨市には橇田(かんじきた)という名字のお宅もあります。履物研究の第一人者であり、『はきもの』の著者でもある潮田鉄雄先生によると、カンジキは用途や地域によって、泥水用や水田用の田下駄、雪上用の輪カンジキ、氷上用の鉄カンジキなどに分けられるそうです。またこの類は、新石器時代に北欧から北アジア、北アメリカに伝わったとされ、北半球の各地で使われているそうです。登山用品としてのカンジキは、木製の他にアルミパイプやナイロン樹脂のものもあり、最近では雪上を歩くことを目的としたスノーシュー(snowshoe)も使われています。スノーシュー(snowshoe)とは西洋カンジキとも訳される雪上歩行具で、カナダなどではホワイトアッシュ(アメリカトネリコ)の割材に、生皮(rawhide)を編み上げたものが使われていました。これも最近ではプラスティックやジュラルミン製が多く、平地では浮力やラッセル能力が高い反面、急斜面でのとりまわしはカンジキに劣ります。簡単に言えばカンジキは湿雪の斜面を歩くことに適し、スノーシューは乾雪の雪原や堅くなった雪原を歩くのに適しています。旧徳山村(現揖斐川町)では雪崩避けの呪文として、「まえクロモジに、あとボーシ・・・」と唱えました。また旧坂内村(現揖斐川町)でも同じように、ユキノドウという雪の妖怪を撃退する呪文として、「先クロモジに後ボーシ、あめうじがわ(黄牛の皮)の八つ結ばえ、締めつけ履いたら、如何なるものも、かのうまい(敵うまい)」と唱えました。これは雪の中を歩くために履く「輪カンジキ」を作るのに、前の輪をクロモジ材で、後ろの輪をヤマボウシで作れば、丈夫で使い勝手の良いカンジキとなり、それを牛の皮で縛ることを伝えているのです。俳句の世界では「カンジキ」は冬の季語であり、明治~昭和の俳人、高浜虚子は「かんじきをはいて一歩や雪の上」と詠みました。雪面に残る一歩、その足跡にも木を知り尽くした先人達の知恵が生きているのです。▲クロモジとヤマボウシでつくったカンジキMORINOTAYORI 4