ブックタイトル森林のたより　774号　2018年3月

概要

森林のたより　774号　2018年3月

【森の名手・名人編集担当公益社団法人岐阜県緑化推進委員会専務理事黒﨑隆司】※原本は長文のため、文章の一部を割愛しています。●生年月日：昭和20年８月26日生まれ●職業：彫刻師浅野貞夫さんのプロフィールあさのさだお23歳から彫刻に携わり、26歳の時に「浅野彫刻」を設立。以後、銘木（秋田杉、屋久杉、神代杉、イチイ等）を活用し、欄間、社寺彫刻、家紋、看板彫刻などの彫刻品の製作や修繕を行っている。近年は、彫刻教室の教材、机、椅子、小物入れなどの木製品の製作も行うとともに、若い人の指導にも力を入れ、技術の継承に細心している。また、出身地の本巣市根尾大河原地区の自治会長や保存会の会長として、神社の清掃、祭りの開催、人家の雪囲いなど集落の保全・保存に尽力されている。名人が楽なんだけどね。欄間の中では透かし欄間が難しい。直線とか筋で風景とか動物を表さんならんでね。普通に彫るよりも透かし彫りの方が正確さが大切。まっすぐな直線でも機械やなくて手でやろうと思うと、ちょっとでも曲がったらまっすぐに見えないから。あとね、技も難しい。尖った長い彫刻刀でくり抜いたり綺麗に削ったりするから。簡単なようで難しいよ。私が彫刻師になったときは彫刻欄間ばっかやってたんだけど、後になってくると象嵌欄間とか透かし欄間が時代によって多くなってきたね。昔もあったやろうけど、そんなに多くなかったと思う。６．欄間が抱く問題昔は毎日欄間を彫ってた。休みなんてほとんどなかったでね。欄間だけを持ち歩く業者がいてね、欄間だけで生活できとった。その頃は建て売りとかどんな家でも欄間がほとんど入る時代だったから。良い家になってくると「うちはこういうすごい欄間を入れた」とか自慢にしてね…。今、欄間を入れるような家は建ってないし、阪神の地震から建築がガラッと変わっちゃって。ほんで、耐震耐震で日本の家屋の良さがかなり消えてしまって。政府の方も耐震ばっかり。今までね、大工さんに頼んでいたことももう今はやってくれる人がいなくて全部自分でやってる。今は欄間だけでやっとったら廃業やわね。７．欄間以外の彫り物お寺関係になるんやけど、「虹こう梁りょう」とかね、お客さんに頼まれるとテーブルを作ったり。昨年は学習机を頼まれたね。椅子なんかはね、調節できるよう９．危機！！！！昔、欄間を彫っとった間は他のことはやってなかった。ここまで少なくなるとは思ってなかったなぁ。今は家屋が変わってまったで他のものばっかり彫ってる。やっぱ残していかなきゃいかんのやけどね。日本の良いとことか知ってる人が少なくなってきてもったいない。うちが色々やってもらってた大工さんも高齢になったり亡くなったりして、良い技術もってる人がね、仕事ができなくなってるから。僕もね、親父じゃなくて自分から始めた仕事だから息子に押しつけることはしない。途中でやってみたいとか言われても１年や２年でできることやないし、僕がやってきたことがすぐできれば誰でもなれるんやけど…。難しいよね。日本の良さはいっぱい家に詰まってたんだけど、みーんななくなってくもんね。若い人がそれを望むんやしね。たまに和室が好きって人もみえるけど、10分の１よりも少ないかもしれんねぇ。けどね。そのイメージと合わないことは結構あるけど…。うちらは納期が早いことが一番苦労するね。それまでに間に合わせんならんからいくつも抱えていると厳しい。に作らしてもらった。表札も彫るよ。看板もお菓子屋さんとか、そういうのは２週間や３週間でできます。あとは、彫刻教室の教材のもとを作ってあげてるんです。姿見の鏡の横のバラとかを下書きとか描いて彫るばっかりにしてあげるの。大量生産はできないけど…。大きい彫り物になると手で持てないようなものも扱うこともあるし、小さいものはほんとにちっちゃいよ。田舎に行くと１枚板の戸があるんだけど、それに松と梅、菊と蘭を彫ったんです。４枚セットで。そういう大きいものに彫ったことが印象深いです。８．彫刻師として仕上がった作品の中には気に入らないものもあって１００％満足できるものはなかなかできないんだけど、満足のいくものができたときの達成感というのが良いよね。私らのやることは溶けて消えるもんはなんもない。後にも全部残ってくるから、いい加減なことはできない。周りから左右されず、自分で思うようにできるのが良い。いつもやってる手慣れたものより初めて手掛けるものがあるときは、迷って眠れないこともあるんだけど、布団の中である程度完成させる構図を描くんです。想像の中でね、いろんなやり方をやってみてイメージを作ってそれからかかるんです名人が作った名刺入れ木材を彫るには力が必要！名人の名刺。木でできていてかっこいい！名人が作った表札名人が作った小物入れMORINOTAYORI9