ブックタイトル森林のたより 777号 2018年6月

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概要

森林のたより 777号 2018年6月

小林一雄(67)髙森かな岐阜県恵那市平成27年取材「森の名手・名人」とは、森に関わる仕事や地域生活に染み込んだ営みのうち、優れた技をもってその業を極め、他の模範となっている達人で、毎年、全国で約100名が認定されています。岐阜県においては、現在、50名の「森の名手・名人」が認定されています。この「森の名手・名人」を「森の”聞き書き甲子園“」に参加した高校生が「聞き書き取材」をしたものの中から誌面の関係上要点を抜粋したものです。なお、年齢、住所、学年は取材当時のものです。46森の名手・名人シリーズ岐阜県麗澤瑞浪高等学校1年名人聞き手1.木地師って言うのは元々木地師って言うのは、桶を作ったり木を彫ったり、要するに木に関わるような人のことやったの。しゃもじを作ったりお椀を作ったりする人も皆、木地師って言われてたのね。ほやけど、昔に皆それぞれの得意な分野に分かれたの。大体、挽ひきもの物、指さしもの物、刳くりもの物と3種類に分かれとるね。挽物は、ロクロを回しながら刃物で削って、お盆とか器を作るの。指物は、木と木を組んで、机とかの家具を作るの。刳物は、四角い物とか楕円の物みたいな、ロクロで回しながらできん物を、手で彫ったりすることやね。でも今は、僕んたちみたいなロクロをやっとる人が、主に木地師って言われとるね。日本の手仕事の歴史ではね、作る物を固定させて、手に持った道具で、削ったり、切ったり、張ったり、塗ったりして物を作るんやね。でも、作る木の器を手挽きロクロで回転させて、刃物を使って形を整えて器を作り出す。こんな作業工程は、日本の工芸史の中でも木地師だけの仕事やね。ほやから、3.道具も自分の手で「思うようなものを作りたい」っちゅう思いがあるもんで、ロクロ鉋の刃の部分も柄の部分も全部、木地師が自分で自分に合った形を作るの。刃物を作ることは基本やからね。扱う木の状態に合わせて、刃先を作るの。刃物の材質としては高こうそく速度ど鋼こうを使っとるの。柄は、自分の所の材料の中でも、加工中にあたってもショックが少ない柔らかい木を使ってます。欅けやきとは違って、柔らかい栃とちとか栓せんを柄にするの。刃物を作る時には消けしずみ炭を使っとるね。買ってきた炭では当たりが硬いもんで、火花が出ちゃうもんでね。そういう炭は荒いもんだから、刃物の周りのすき間が多くなりすぎちゃうの。だから、消炭が丁度いいの。だから木を燃やして、わざわざ自分で作るの。4.自然の恵みは無駄なく使う木を沢山切って、ロクロでお盆とかを作ると、中になる所は捨てちゃうでしょ。それを「もったいない」って言う人も中にはいるのね。でも、作った物を、長く何十年にも渡って使えるっちゅうことは、凄いエコなんですね。僕らは自分が気に入った木を買ってきますので、できれば最後まで使えれば良いんですけど、やっぱり捨てないかん所もあるもんでね。こういう所はちょっとした器や小物を作るとかね、なるべく無駄にはしないつもりでいますね。それでも余った木の切れ端は、炭を作ったり、乾燥庫で焚いたりして、有効に使わしてもらっとるね。5.瘤に惹かれてやっぱり、自然の木っちゅうもんは美しいよね。どんな木でもそうやけど、幹に瘤ができる木と、できん木があるの。同じ木でも、普通の木目と瘤の木目では全然違っとってね。僕は、伯父さんが作っとった、瘤を取り入れた器とかを仕入れて売ってたの。2.製材から漆塗りまで一貫してうちは、材料を各務原の方で仕入れて、自分で製材して、漆塗りをするところまで一貫してやっとるの。一般的に、漆塗りは別の職人さんに仕上げてもらうことが多いけど、僕は漆塗りまで、自分の所でやることにこだわってるね。最後の仕上げの漆塗りは、女房や息子も、今、勉強してますね。元々僕は、木の表情を、木目の美しさを表現するために木地師になったようなもんやで、作り甲斐はあるわね。漆は自然環境の中で水分がないと乾かんもんで、冬に塗る時なんかは、本当に苦労するの。でも、自分たちの環境でどう塗るかとかも、長年かけて培ってきたもんでね。僕がこの仕事を選んだことや、親父から修業ができたことに誇りを持ってやっとります。木地師木目にこだわり、美を引き出す―全ての工程を手掛ける木地師の思い―仕上げ挽きの様子木目を生かした漆塗りにこだわるMORINOTAYORI 8