ブックタイトル森林のたより 777号 2018年6月

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概要

森林のたより 777号 2018年6月

【森の名手・名人編集担当公益社団法人岐阜県緑化推進委員会専務理事黒﨑隆司】※原本は長文のため、文章の一部を割愛しています。●生年月日:昭和23年4月18日生まれ●職業:木地師小林一雄さんのプロフィールこばやしかずお会社員を経て、28歳の時に父親に師事し、木地師の道を歩み始め、恵那市東野で「小林ロクロ工芸」を創業。平成6年に第6回伝統工芸木竹展で入選後、多くの入選を重ねる。平成13年に岐阜県卓越技能者(名工)として知事表彰。平成18年には、木地師としては、岐阜県で初めて「日本工芸会」正会員に認定。平成23年には、第23回日本煎茶工芸展「栃こぶ拭漆高坏」で文部科学大臣賞を受賞。その後も日本伝統工芸展などに出品し、入選を重ねるなど、高い評価を受けている。また、地域の木工教室の講師やインターンシップの受け入れにも積極的に取り組み、ご子息を後継者に、技術の伝承とともに、多くの優れた作品を生み出されている。名人その時に、この木目程ではないけど、これに近い木目を見た瞬間、「おぉ!」って、心が震える様な気持ちになったの。「木にも色々な表情があって凄い」っていう感動があってね、こんな木との出会いがあったからこそ、今があるんだって思っとるね。普通の木目でも同じのはないけど、似た感じのは揃えれるんやね。だけど、瘤の付いとる木は、本当に希にしか出ないもんで、頼まれても中々注文には応えれんよね。6.宿木の美宿やどり木きっちゅうのは、木の枝にできた傷に、種が飛んできて、そこから根っこを張って、木の栄養を吸って育つのね。だから、木を切った時に葉っぱも根っこも死んじゃうから、根っこがスルンと取れて、木に穴が沢山開いちゃうの。昔は、穴の開いとる宿木はゲテモノって言われて、皆買わなんだの。でも僕は直感で「これは面白い」と思ったもんで買ったの。その時、市場の人から「これは欅材の中でも特別で、宿木というんやよ」って教えてもらったの。僕は「この原木で、何か作るとけることを嬉しく思ってます。できれば、親父、そして僕を乗り越えられるような技術を身に付けてもらいたいと願ってます。それを、一生懸命補佐しないかんで、現役で頑張って、少しでも息子の生きていく道を開拓してあげなくちゃいけないと思って、やってます。技術を全部は伝えることは無理かもしれんけど、せめて親父から受け継いだ技術を伝えていきたいですね。[出典情報]※「写真」ヤドリギhttp://yasousuki2.exblog.jp/8977492/やと思うの。今はどっちかっちゅうと、そういう木の方が、味のあるものができるんやね。手をかけりゃあかけただけ、魅力が出るっちゅうことやね。その中でも、扱いが難しいって言われとる神じんだい代っちゅう木があるの。神代は、千年以上土の中に埋もれた木のことで、「埋もれ木」とも言われるの。こういう木で作品を作ろうとすると、今まで土の中で抑圧されとったやつが一気に外へ出ちゃうもんで、割れたり狂ったりしやすいの。ほやから、大きい木はなかなか珍しいし、宝石を探すようなつもりで探しとる人もおったりするの。8.これからの目標「守・破・離」ありがたいことに、最初に親父の仕事を見てたからね。綺麗に仕上がった親父の作品が常に手本やった。技術面でも精神面でも、近づけようっちゅう目標が常に身近にあった。それに向かってやって来れたから、日本工芸会の正会員にもしていただけたのかも知れんね。「守・破・離」ちゅう言葉があってね。昔からの決められた型や伝統を守ることは基礎として大事やと思う。以前はそれが大事やと思っとったし、展覧会の審査でも、そっちの方が認めてもらえることが多かった。でも、僕らも、同じものを100も200も作ると飽きるし。ある程度は楽しんで物作りをしたい時期やね。今は、「破」や「離」の部分も、楽しみたいと思っとる。昔からの伝統は大切に、自分がやりたいことには、どんどん挑戦していきたいね。それで、木の温もりをみんなに伝えて、個展なんかやった時に、お客さんが「いいねぇ」って言ってくれるのが喜びやね。今回、息子が継承することになりました。けど、僕自身、木工の仕事の大変さをよく知ってるから、とても後を継げとは言えなくて…。自分から進んで「僕、ロクロをやりたいけど」ってことだったので、苦労することは間違いないと思うけど。後を継いでもらえば、この後もずっと親父から僕、そして三代目のような形で、木地師としての技術を継承してい面白いやろうな」って思ってね、お盆をはじめ、何点かを作品展に出したの。その時に俳句の先生が来て「宿木はね、万葉集の中に歌ってあるよ」っちゅうて。それで調べたら、宿木のかんざしを好きな人の頭に挿してあげたっちゅうような歌があってね。その他にも、世界的には、儀式なんかで使われたりしとるの。宿木みたいに、穴が沢山開いとるのは、伝統工芸展には出せんけど、自分の個展には出しとる。個展の時には、こういう結構変わったものでも喜ばれるんやよ。最近、皆がこうゆう物を買うようになったちゅうことは、宿木の美に対する想いが分かってもらえた気がして嬉しいね。7.扱いにくいからこその魅力世の中には色々な人がおるもんでね。でも、それは木にも言えることで、木目が美しく出る木とか、粘っこい木とか、割れやすい木とかね。硬い木なんかは特にそうやけど、漆を塗らんでもチカッと光る木もあるもんでね。ほんで面白いよね。そういう木を見た時に「おっ!」って思うか思わんかだけ原型の瘤が見られる栃の器の裏側1年中緑の葉を茂らせる宿木※MORINOTAYORI9